40. 次の作戦
次の作戦、それはもちろん彼を呼び出すことだ。
この前初めて部下に接触してから約一週間ほど、いつものメンバーで集まることなく、ずっと携帯で連絡をとってきた。もし魔王の討伐計画が彼に見つかれば、それは即ちこの計画終わりを意味する。
(ついに明日かぁ。二回目の実行日)
魔王の巣が見つかったときは、総力戦になるだろう。それこそ国の全てをかけて、彼を討伐するに違いない。
けれど、今回の件に関しては、エリーズに全てがかかっていた。エリーズの剣術がどれほど部下に通用するかは分からない。けれど、今まで国内最高の魔法士が彼に勝てなかったのだから、"目には目を歯には歯を方式"は件の戦いには適用することができず、消去法でエリーズが戦うしかないのだ。
(やっぱり緊張しかないけど、今日は早く寝ないと明日に響くか)
エリーズはそっと目を閉じた。
*
爽やかな朝、外は早くも日が差していた。
これはかなり暑くなるに違いない。
(最悪だ……)
とぼとぼと着替えをする。そんな場合じゃないんだけど。
着替えを終え、今日の用意の確認をしようと学校の鞄の中を探っていると、手が何だか金属質の固いものにぶつかった。しかも結構大きい。
(え、何これ……)
取り出してみると、それは手紙で送られてきたナイフだった。レオンのお姉さんが、手紙に入れておいてくれたやつだ。
ただ、その大きさは元のやつの五倍ほどになっており、ナイフ、と言うよりも剣、と呼ぶのが相応しいと思える代物だった。
(レオンのお姉さんが魔法を使った?)
考えられる可能性はそれだけ。一応レオンも来るべき戦いに備えて剣を用意してくれていたが、このナイフは突然変異するだけの魔力を持っているのかもしれない。うん、役立つかも、というわけで、そのナイフも持っていくことにした。
学校へ着くと、すぐさまトイレに篭もり、連絡を取る。前世の高校は息を止めてトイレに入らなければならないほど古かったが、さすがは金持ち学校、細かい部分にまで手入れが行き届いている。いつ見てもトイレにはシミひとつなく、白く輝いていた。
「今日、呼び出すのよね?」
エリーズがまず電話をかけたのは、この計画の幹部であるレオンだ。
「あぁ、そうだ。とりあえず部下の教室である二年A組まで行って、放課後呼び出す。それで、戦う」
とりあえず、今のところ間違えていることはなさそうだ。
「あと、戦いの間はクルーエさんやサラやミシェルが陰から隠れて見守っているから、戦況が不味くなったら、そちらに駆け込んでくれ」
「分かったわ」
凡そ貴族の娘らしくない会話を終え、エリーズは電話をきり、長い溜め息をついた。
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