37. 魔法鑑定

  ミシェルに手紙を手渡すと、彼は何やら呪文を唱え、それを空中に固定した。


「マジックジャッジ」


  彼が呟いた瞬間、彼の手の中に緑の光の紋様のようなものが生まれた。それを手紙の上にかざし、ゆっくりと、下へ下げていく。手紙のすぐ下まで下ろしたところで、光の紋様は消えた。


「この手紙は、確かにレオンのお姉さんが、魔法を使って送ってきているものだ。それに、この手紙を送り出したのは、今日の朝らしい」


  しばらく手紙を見つめたあと、解析を終えたらしいミシェルが言った。


「だけど、正確な居場所までは分からなかった。たぶん魔王城の魔力が強すぎて、元の魔法がよくわからなくなっているんだと思う」


  すまない、と頭を下げる。


「いや、いいんだ。それは元から、諦めていたことだから。魔王だって、そんなに簡単に居場所が分かるところに、拠点など置かないだろう」


  申し訳なさそうにしているミシェルに、レオンは言った。

  けれど言われてみれば確かにレオンの言う通りなのだ。魔王を見つけるというただそれだけのために、今まで何百年という時間を費やし、そしてとうとうそれは叶わなかった。魔王とは、そんな人なのだ。

  今回だってエリーズ達が協力したところで、何も変わらないかもしれない。国家はやっと本気を出し、国中の軍事力を尽くして事態に対応しているが、それでも見つからない。

  魔王に出会ったことはないし、噂しか知らない。けれど、たくさんの人々を無意味に傷つけたというその罪への怒りから、エリーズは手を握りしめた。


「それに、魔王だけじゃないんだ。魔王の部下達とも、戦って勝たなくちゃいけない」


  レオンは続けた。


「とりあえず、今は計画を練るしかないんだ。姉さんが今のところは無事らしいことだけでも分かって、俺は嬉しかった」


  そう言ったレオンはこの討伐計画について書かれている手帳を取り出した。まだ使い始めて間もないはずなのに、すでにくたっとしている。


「私も、役に立てるよう頑張ります」


  手帳を見つめた、サラが呟いた。

 

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