第445話 アラクネ撃退

糸のネットを放出したアラクネは、その瞬間動きを止めており俺が踏み込んだ一歩分距離が詰まる。

距離が詰まった状態からバルザードを振るいアラクネの上半身に向けて斬撃を飛ばす。

この一撃で仕留められるとは思っていない。

斬撃を放ったと同時に斬撃を追うように俺自身も更に前に踏み込んで行き、バルザードの斬撃が命中してアラクネが怯んでいる内に完全に距離を詰めた。


「ドウッ!」


俺は、ほぼゼロ距離から『ドラグナー』を放った。

先程は離れた距離からだったので避けられたが、この距離からなら避けるのは不可能だ。

俺の放った銃弾は青い光の糸を引いてアラクネの胸の部分に命中して風穴を開ける事に成功した。


「やった……」


胸に穴の空いたアラクネは、すぐにそのまま消滅した。

思った以上に強かった。

上半身は人型なのでカメラや龍より防御力は劣っていたが、イレギュラーな動きを可能とする機動力と言う点では今まで出てきたモンスターの中でも上位に位置していると思う。

俺は目の前の敵を倒した事で、少し気を緩めてしまったがまだもう1体いる。

慌ててベルリアの相手にしていた個体に目をやる。


「え?」


俺の目の前には予想外の光景が映った。

俺の目にはアラクネの前に粘糸ネットで包まれたベルリアが倒れているのが見えた。

先程の斬り合いはベルリアが押していたはずだ。

それなのにベルリアが倒れている状況を見ると、おそらく先程見た斬り合いの最中に極至近距離から粘糸ネットをくらったのだろう。

ベルリアと言えどあの斬り合いの最中に至近距離からネットをくらえば避ける事は困難だろう。

俺の時はネットを放出して無防備になった所を仕留めたが、まさか戦いの最中にあのネットを放出出来るとは思わなかった。


「ミク!カオリン!ベルリアを!」


俺との距離は10Mは離れている。すぐにベルリアの前に立つ事は出来ないのでミクとカオリンに頼んで俺はもう1体のアラクネに向けて走り出した。

ミクの火球とスナッチのヘッジホッグが着弾しベルリアを襲おうとしていたアラクネの動きを一瞬止める。

その直後にアラクネとベルリアの間に氷の柱が出現する。

カオリンは『ファイアボルト』では無く『アイスサークル』を選択した様だが、これによりベルリアを守る時間が稼げた。

アラクネは突然現れた氷柱をどかす為に足を使って削り取り始めたが、『アイスサークル』により出現した氷柱が一撃で壊せる訳もなく、何度も攻撃を繰り返している。


「ベルリア、無事かっ」

「マイロード申し訳ありません。この様な姿を……この糸さえなければ私の敵では無いのですが。不覚っ」


一瞬ベルリアを安全圏に運ぼうかとも考えたが、見るからに粘着性のある糸なので、このまま触れるとミイラ取りがミイラになりかねないと思い止まり、ベルリアの前に立ちアラクネとの交戦を選択した。


「シル、俺が退けたら雷撃で倒してくれ」

「お任せ下さい、ご主人様」


当然俺が倒してしまえそうであれば自分で倒すつもりだが、ベルリアを守りながら戦うのはどう考えても不利なのでとにかくここから引き剥がす事を優先する。

氷を削り切って再び攻勢に出ようとするアラクネに向かいバルザードの斬撃を放つが、ジャンプして右上方に避けられた。

先程も『ドラグナー』の一撃を避けられたので想定済みだった俺は続けて『ドラグナー』を放つ。

青い光の糸を引いた弾丸がアラクネの肩口を穿つ。


「キシャアアアア〜」


アラクネは完全に人のものとは異なる声を上げて、着地すると同時に後方へと跳ね退いた。


「蜘蛛如きがご主人様の手を煩わすものではありません。消えて無くなりなさい『神の雷撃』」


閃光と爆音と共に雷撃がアラクネに降り注ぎ、その瞬間勝負は決した。

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