第380話 テスト本番

俺は今までの人生には無い新感覚の昼食を終えて春香の部屋で勉強を再開した。

美味しい食事を終えてこれから集中して勉強したいのだが、思いの外疲労してしまった。

ほぼ1日中ダンジョンに潜っていた時の疲労感に近しい。


「はい、集中!」

「あ、ああ」


集中力も散漫になりつつあるが明日はテスト本番なので頑張るしか無い。

その後も春香と問題を出し合いながら夕方に勉強会を終えて帰宅した。

家に帰ってからも直前の詰め込みを敢行したが、やはり自分の部屋の方が集中出来る。

翌朝、いつも通り家を出てテスト本番に臨む。

1時間目は英語だ。

英語は残念ながら、普段使う機会も無いこともあってか苦手な部類に入るので、まずこれを上手く乗り切りたい。

問題を解いていくうちに、何問か見覚えのある問題が混じっている事に気がついた。

春香が昨日出るよと言って問題を出してくれたところがそのまま出ている。

なぜ春香には出る問題の予測が出来ていたのか分からないが、さすがは春香と思いながらスムーズに解いていった。

集中力散漫になりながら勉強した昨日の成果が確実に出ている。

その後、他の教科のテストも受け無事に初日のスケジュールをクリアする事が出来た。


「海斗、テストどうだった?」

「ああ、結構出来たと思うけど」

「俺も山が当たってかなりいい感じだと思う」

「真司はどうだった?」

「俺も前澤さんと一緒に勉強したからいつもよりは出来たと思う」


どうやら手応えがあったのは俺だけでは無い様なので、残りの教科も頑張らないといけない。

帰りの用意をしていると今度は春香が声をかけて来た。


「海斗、どうだった?」

「うん、春香のおかげでいつもより出来た気がする」

「そう、よかった。それじゃあ今日も一緒に勉強する?」

「はい、お願いします」

「それじゃあ、私の家でいいかな?」

「あ、ああ〜」

「今日は海斗の家にする?」

「あ、じゃあそれでお願いします」


春香と勉強するのはうれしいが、春香の家で集中して勉強するには体力と精神力が必要になってしまうので、俺の家だとありがたい。

そのまま一緒に春香と家まで帰って、すぐに勉強するつもりだったのに母親に捕まってしまった。


「あら〜春香ちゃんじゃない。一緒に勉強するの、あ〜そう。ゆっくりしていってね」

「はい、ありがとうございます」

「海斗が迷惑かけてない?大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

「いつでも来てくれていいからね」

「ありがとうございます」


長くなりそうだったので遮って、春香を自分の部屋に連れて行く。

ここで気がついてしまったが俺の部屋にも机は勉強机が1つしかなかった。

仕方が無いので昨日と同じ様に椅子を持って来て勉強を始めたが、やはり距離が近いので集中が乱される。

地上では残念ながら『アサシン』のスキルが作動する事は無くただのモブでしか無いのが辛い。

それでも雑念を払って勉強に集中しているとノックの音がして母親が現れた。


「仲良く勉強して偉いわね。お菓子とお茶持って来たから食べてね」

「はい、ありがとうございます」

「春香ちゃんは、本当に久しぶりね〜。大人っぽくなったわね〜。海斗をよろしくね」

「はい、こちらこそ」

「もういいだろ、勉強の邪魔になるから」

「はい、はい」


やはり母親は油断ならない。お茶を持ってくる以外の意図があったのは間違い無い。

難敵を退けて、お茶を飲んでから再び試験勉強に臨むが、やはり春香の勉強法は参考になる。

ポイントをつかんでいる感じなので俺と違って要領がいいのだろう。

1時間程度勉強を続けたところで再びノックする音が聞こえて母親が入ってきた。


「ケーキを買って来たから食べてね。実はこの前2人がデートしてるのを見かけたのよね〜。仲良くしてくれてるみたいでありがとうね〜」

「いえ、こちらこそありがとうございます」

「もういいだろ、勉強の邪魔だって」

「はい、はい」


油断も隙もない。ケーキなんかこの一年出て来たことがないのでさっき買って来たのだろう。

久しぶりに家で食べたケーキは美味しかったが、集中力を乱されてしまった。

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