第341話 対ドリームイーター

「えっ!?」


俺はヘロヘロになりながらフロストデーモンを倒したので最後の1体ドリームイーターがどうなったのか確認する為に視線を移した。


「なんで……」


ドリームイーターは未だ健在で、シルとルシェが交戦している。

カオリンとベルリアはどうなった?

後方に目をやるとそこにカオリンが倒れていた。そしてその横にベルリアも倒れていた。

ベルリアお前もか……

どうやらミイラ取りがミイラ状態でベルリアもドリームイーターのスキルにやられてしまったらしい。


「あいりさん、ミク、シル達のフォローを頼む。俺はちょっと休ませて」

「わかった、任せろ」

「わかったわ」


恐らくドリームイーターは固体では無いのでシル達の攻撃が効き難いのだろう。カオリンの魔法で氷漬けにしてから破壊すれば倒せるのではと考えたが、カオリンが倒れている以上難しい。

後はスキルで倒すしか無いが俺の『ウォーターボール』では絶対無理だ。

可能性が最も高いのはルシェの『神滅の風塵』だが……あれは………

よし、カオリンを起こそう。

頭を切り替えた俺はナイトブリンガーの効果を発動して、倒れているカオリンの元まで走った。


「カオリン、しっかりしてくれカオリン」


ドリームイーターに気取られないように、耳元に顔を近づけて呼びかけてみるが全く反応が無い。

次に肩を揺すりながら呼びかけるが全く反応が無い。

気が咎めたが緊急事態なので仕方無くほっぺたも少しだけ叩いてみたが反応が無い。

ドリームイーターにより通常では無い深い眠りに誘われているようで反応が無い。

一応念のためベルリアにも同じ事をしてみたが反応は無かった。


「あいりさん!」


ミクの声に反応して前方を見ると今度はあいりさんが倒れてしまっていた。

やはりシルとルシェだけが特別で他のメンバーではドリームイーターのスキルを防ぐ事は難しいようだ。

俺も同じだろう。気絶防止のリングは買ったが、恐らくこれは気絶では無く眠りなので効果は無さそうだ。

俺まで眠ってしまったら詰んでしまう。

もう猶予がない。

う〜ん。あ〜。またあれを…………

まだシルとルシェに1本づつ低級ポーションを持たせてあるが、交戦中なので俺が近づいて目をつけられるとまずい。

俺は極力気配を薄めてミクに近づいていった。


「ミク、低級ポーション持ってる?」

「ええ、あるわよ」

「後で返すから1本くれないか」

「別に返さなくていいわよ」

「助かるよ」


ミクから低級ポーションを受け取って本日3本目を飲み干す。

低級ポーションは洋風な名前だが味は漢方薬のような味がする。

お世辞にも美味いとは言えない味だ。しかもそれなりの量があるので短時間に3本は結構きつい。


「う〜まずい。お腹がちゃぽんちゃぽん言ってるよ」


しばらくして体力が戻って来たのを実感する。


「ルシェ!あれをやってくれ」

「わたしは今忙しいんだよ。あれってなんだ」

「あれだよあれ。『暴食の美姫』だよ。いってくれ」

「えっ?いいのか?本当にいいんだな」

「ああひとおもいにやってくれ」

「わかったよ、こんな低級なやつに使わされるのは癪だけど、まあ美味しいからいいか」


美味しいって何だよ、人を食べ物みたいに言うな!


「それじゃあいくぞ『暴食の美姫』」


おおおおおお〜キタ〜久々にキタ。3度目の『暴食の美姫』だ。


「ぐううううう〜」


相変わらず苦痛耐性(微)が仕事をしてくれている感は無い。

この感じM体質の人間にとってはもしかして苦痛では無く快楽なのかもしれないがノーマル属性の俺には最上級の苦痛でしか無い。

こうなったらもう俺に出来る事は何も無い。

ただひたすらにのたうちながら、俺の命が尽きてしまう前に事が終わるのを待つだけだ。

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