第220話 12階層

俺は今12階層に潜る階段の手前にいる。

週末になったので12階層のアタックする事になった。

集合した時に来月の遠征イベントの事を相談してみたが、予想通り3人共泊りがけの遠征は無理との事だったが、俺が隼人と真司と一緒に行く事にはみんな賛成してくれた。

最近毎週のようにダンジョンに潜っていたので、メンバーもプライベートで遊びに行くのに丁度いいタイミングだったようだ。


「みんな、申し訳ないけど準備があるからちょっと待ってくれるかな」


そう言ってから俺はナイトブリンガーとスーツの上半身を脱いでから、リュックに詰めていた下着を2枚追加で重ね着してから貼るカイロを全身に貼りつけて鎧を着込んだ。


「お待たせしました。それじゃあ12階層行ってみようか」


前回は一瞬で戻って来てしまったので実質初めての12階層探索を開始したが、やはり薄暗く、そして寒い。


「ご主人様、前方にモンスター5体です。高速で向かって来ています。ご注意下さい」


「ベルリアと俺とあいりさんが前衛。後のメンバーは後ろでフォローして」


数が多いので3人で並んで迎え撃つ事にするが、高速で向かって来ている割に何も見えない。

次の瞬間ベルリアが剣を振るったので、俺も慌てて身構えるがやはり何も見えない。


「ベルリア、敵か?どんなやつだ!?」


「よくは分かりませんが、気配がしました。」


薄暗いせいで俺もよく分からない。


「あいりさん見えますか?」


「いや、見えない。まずいな。」


「ぐっ!?」


鎧越しに何かの攻撃を受けたがやっぱりわからない。


「シル『鉄壁の乙女』を頼む。誰か敵が見えてる?」


「・・・・・・・・」


誰も敵が見えていないらしい。どうする?


「ルシェとりあえず前方に『破滅の獄炎』を頼む」


ルシェが『破滅の獄炎』を放った瞬間、炎の明かりで敵影が映し出された。

映し出されたのは10cm程度のネズミだった。


「ネズミ?」


この小さなネズミがどうやって攻撃して来たんだ?


「ガンッ!!」


突然『鉄壁の乙女』の光のサークルに鋭利な石のような物が当たって砕けた。

魔法か!?この小さなネズミが魔法を使ったようだ。

以前11階層で黒猫と戦った時でさえ俺は手こずって役に立てなかった。それは今回は暗闇の上にたった10cm程の動き回る標的。俺では相性が悪すぎる。


「シル、敵の数はどうだ?」


「先程のルシェの攻撃で2体は消滅したようですが、まだ3体残っています」


「ベルリア捉えられるか?」


「やっては見ますが小さすぎて正直厳しいです。」


「みんな!ネズミの居場所は確認できる?」


「・・・・・・・・」


やはり俺同様、この暗闇で小さなネズミを捉える事は難しいようだ。

どうする?どうすれば良い?

このやり取りの間にも数発攻撃が飛んで来ているか、よく観察していると全て前方からの攻撃だけのようだ。


「シル『鉄壁の乙女』の効果が切れたら『戦乙女の歌』を頼む。ルシェは『戦乙女の歌』が聞こえたら、すぐに前方に『破滅の獄炎』を連発してくれ。ミク、スナッチにも『ヘッジホッグ』を使わせて。俺とベルリアで前に立つぞ!3人は後ろに下がって。」


俺のとった作戦は戦術と呼べるようなものではない。強化した『破滅の獄炎』で前方を焼き尽くす。それだけだ。

光のサークルが消えた瞬間俺とベルリアが前に出て頭にだけは攻撃を受けないよう顔の付近でバルザードを構える。

次の瞬間シルの歌声が頭の中に流れて来た。


「ルシェ!頼んだぞ!」


「わかってるって。『破滅の獄炎』 『破滅の獄炎』」


眼前一帯が獄炎により火の海と化す。

仕留めたか?

そう思った瞬間ベルリアが剣を振るう。


「ルシェまだだ。もう一回頼む!」


「ちっ。チョロチョロするな。『破滅の獄炎』 『破滅の獄炎』 」


ルシェによる五発目の獄炎が放たれてようやく敵の気配が無くなった。


「シル、敵の反応は?」


「ご主人様、どうやら5体共消滅したようです」


なんとか退けたようだが12階層での最初の戦闘は想像していた物とは全く違うものとなってしまったようだ。


あとがき

7/1にコミカライズ開始日もお知らせ出来そうです。

サバイバー最弱の俺はハズレスキル『フェイカー』で天使な彼女とSランクを目指す がドラゴンノベルズ大賞に参加中です。

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