第182話 ミイラ

俺は今11階層に来ている。

暑い・・・

カオリンを気遣ってマントを渡してしまったせいで滅茶苦茶暑い。

返してくれとも言えないので我慢するしかないが、汗とともに体力がガリガリと削られていく。

とりあえず早く、切り上げて帰るしかないが、まだ11階層の探索を始めてどれだけもたたないので言い出せない。


「ご主人様。モンスターです。注意してください。」


待っていると現れたのは、ミイラ化した、ファラオの様なモンスターと同じくミイラ化した犬の様なモンスターが2体だった。


「シル『鉄壁の乙女』を頼む。みんな相手の出方を見ながら遠距離攻撃で倒せるなら倒してしまおう。」


先程と同じ轍は踏まない様まずは防御を固めて相手の能力を見極めようと思う。

光のサークルの中から全員で一斉射撃を行う。バルザードの進化もあって、魔核銃での一斉射撃も久しぶりな気がするが、確実に3体のモンスターを捉えている。


「プシュ」 「プシュ」 「プシュ」


連射していくがモンスターがどんどん近づいてくる。


「海斗、なんか効いてない気がするんだけど。」


「海斗さんもしかしてミイラだから、もう死んでるんじゃないのですか?聖水か何かじゃないとダメなのではないのですか。」


「どうする、打って出て斬り伏せようか?」


「いえ、万が一があってはいけないのでサークル内から攻撃を続けましょう。カオリン『ファイアボルト』を頼む。ルシェ『破滅の獄炎』を犬に頼む。俺は真ん中の人型を狙う。」


俺は真ん中のファラオっぽいモンスターに向けてバルザードの斬撃を飛ばすが、何も起こらない。

なんだ?外れたのか?

今度は外さない様に十字斬りに斬撃を飛ばすが、やはり何も起こらない。


「マイロード、おそらくあの人型、魔法障壁の様なものを纏っていると思われます。物理攻撃である魔核銃は届いていたので、魔法系の効果が無効になっているのかもそれません。私が相手をします。」


そう言ってベルリアが飛び出して行ってしまった。

とにかく一体ずつ、倒さなければならないので、残った犬型に向かって斬撃を飛ばす。

今度はダメージは与えることができたが、爆散しない上にまだ普通に動いている。


「こいつら、やっぱり死んでるのかもしれない。ルシェもう一発頼む。」


ルシェに犬を頼んでから俺は人型の方に加勢に出る。

ベルリアはミイラの攻撃をかわしながら剣戟を加えているが、やはり斬っても普通に動いている。

再生能力は無さそうだが、他にも能力を秘めているかもしれないので警戒しながら近づいていくと、ベルリアに向けてモンスターが毒液と思しきものを吐き出した。周りの砂から煙が出ているのでやばいのは間違いないが、耐性のあるベルリアには効果がなかったものの、あれが俺ではなくて本当によかった。

そのまま後ろに回り込んでから飛び込んで、一刺しして、破裂のイメージをのせるが、全く効果がない。このままではまずいと思い、今度は切断のイメージを繰り出す。

次の瞬間、人型のミイラは胴体から真っ二つに切断されて、消滅した。

どうやら、破裂の効果は生物限定なのかもしれない。今まで非生物に使用した事がなかったので良い経験になった。


「マイロードご助力ありがとうございます。なかなかの強敵でしたね。死なない上に特殊効果持ちでしたね。」


「ああ、ベルリア、なんか毒液みたいなのくらってたけど大丈夫か?」


「特にダメージはないのですが、少し臭うのでどこかで洗いたいです。」


「じゃあ戻ったら10階層でシャワー浴びさせてやるよ。」


「ありがとうございます。じゃあ今日はさらに頑張りますね。」


全部のモンスターを倒し終わったのでみんなの所に戻ると


「海斗。ちょっといい?」


「なに?」


「さっきの戦闘なんだけど、海斗とベルリア以外は光のサークル内でしか戦わなかったよね。」


「うん。まあそうだね。 」


「今までもあった事だから、最初は特に気にならなかったんだけど、私たちの事気遣ったんでしょ。」


「まあ、それもあるけど。」


「でも自分は飛び出したよね。」


「まあ遠距離攻撃だけだと難しそうだったからね。」


「カオリンの件があったから慎重になるのはわかるけど、私達の事を気遣いすぎるのは良くないと思う。」


「私もそう思う。私は基本近接で戦うタイプだから、前に出ないと上手く戦えない。気遣ってくれるのは嬉しいが、それによってパーティの戦い方に影響が出るのは良くない。しかも海斗1人だけ負担するのは良くないな。」


「まあ確かに慎重になっていた部分は否定できないかな。」


「海斗さん。普段から私達の事を気遣ってくれているのはわかっています。本当にありがとうございます。でもパーティですから、海斗さんだけではなくみんなで進んで行きたいのです。」


「みんな海斗には感謝してるのよ。」


「ああ、海斗のおかげで本当にいつも助かっている。」


やばい、俺泣きそう。

みんなの事は出来るだけ気遣っているつもりだったが、みんながこんな風に思ってくれているとは知らなかった。先程の戦いは少し過敏になっていた部分があったのは間違いない。今後はみんなで協力しあって進んでいきたい。

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