第181話 判断ミス

俺は今11階層で血の気が引いている。

カオリンがスフィンクスの火の玉をくらってしまったのだ。

なんでだ?

どうして後方のカオリンにダメージが入ってしまったんだ?ベルリアか?

そう思ってベルリアを見たが、対峙していたモンスターは既に片づけられていた。

どうやら、あいりさんが対峙しているスフィンクスがやったようだが、『幻視の舞』も発動しているはずなのになんでだ?


「ベルリア、カオリンに『ダークキュア』を頼む。」


「かしこまりました。」


ベルリアに指示する間にもスフィンクスが四方に向けて火の玉を連発しているが俺達を狙っているわけではなさそうだ。よく見ると『幻視の舞』で幻影を見ているようで、幻影に向かってやたらめったら、撃ちまくっているせいで、流れ弾が運悪くカオリンに命中してしまったようだ。

危なくて近寄れないので


「ルシェ『破滅の獄炎』を頼む。」


ルシェの一撃であっさりとスフィンクスを葬る事ができたが、慌ててカオリンの元に駆け寄ると既に他のメンバも駆けつけていた。


「カオリン、大丈夫か?」


見ると服に燃えた跡があるが、それ以外は問題ないように見える。


「大丈夫なのです。かなり痛くて死ぬかと思いましたが、今は全く痛みもないです。」


「マイロード、私の『ダークキュア』で完璧に治療できましたのでご安心ください。」


「ベルリアよくやった。助かった。」


「ベルリアくん、ありがとうなのです。」


「いえ、当然の責務を果たしただけです。」


『ダークキュア』はカオリンにも問題なく効果を発揮したようで本当に助かった。


「カオリン、ごめん。俺の判断ミスだったかもしれない。後衛のカオリンを危険な目に合わせてごめん。」


「いえ、海斗さんのせいではないです。私が鈍かっただけです。気にしないでください。」


「とりあえずその服だとあれだから、このマントを羽織ってよ。」


「ありがとうございます。」


カオリンは大丈夫だと言ってくれるが、俺の判断ミスがあったのも確かだ。スフィンクスの吐く火の玉が、『幻視の舞』によって被害を拡散するとは思いもしなかった。

『幻視の舞』は強力なスキルだが、使いどころを間違えると大事になりかねないようだ。

どうせなら最後のスフィンクスを先に仕留めた方が良かったのかもしれない。

正直その選択をする時間の余裕はあった気がするが、リアルタイムでは判断できなかった。

それにしても頭とかに当たらなくて良かった。いくら『ダークキュア』があるとはいえ、頭に火の玉が直撃する事を想像したくない。

ダンジョンに潜る以上、怪我を負うリスクはあって当然だが、K-12のメンバー構成であれば、それを最小限にする事は可能だと思う。

正直カオリンがダメージを負ったのはかなりショックだった。自分がダメージを負うのとは全く違い、精神的にショックだった。

今後、効率だけではなく、メンバーが極力安全を担保できるような形での探索を重視していこうと思う。

焦らずに着実に探索を進めたい。


「みんな、これからはもう少し周りの事も判断できるように努めるから、ごめん。」


「『幻視の舞』は私のスキルだから、コントロールできなかった私の責任。ごめんね。」


「あのスフィンクスと相対していたのは私だ。私がもっと早く片をつけていればこんな事にはならなかったんだ。ごめんなさい。」


「みなさん。私が避けられなかっただけなんです。みんなの責任ではないのです。」


みんなそれぞれに思う事はあるようだが、メンバーがこの経験を生かせば、次のスフィンクス戦で同じ轍は踏まなくて済むだろう。

いずれにしても、俺がパーティリーダーなのだから1番しっかりしないといけないのは間違いない。

反省を胸に探索を再開する事としたが、マントが無くなり暑くて仕方がないので申し訳ないと思いながらもカオリンにお願いして『アイスサークル』を発動してもらった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る