姦計を巡らす者
痛みに耐えた響は両手を目元の高さまで上げると、構えを取りカイムイヴィルダーの動きを見る。
カイムイヴィルダーも返り値で切っ先が赤く染まったサーベルを掲げると、響の様子をうかがう。
互いに見合って動かなくなること数十秒、先に動き出したのはカイムイヴィルダーであった。
「うわあああぁぁぁ!」
サーベルを横に構えたカイムイヴィルダーは響に襲いかかるが、ジャンプした響によって回避される。
カイムイヴィルダーの背後を取った響は、そのまま後ろから腰を両手で掴むと、後ろにブリッジをして頭から叩きつける。
ジャーマンスープレックスによって地面に叩きつけられたカイムイヴィルダーは、もがいて拘束から逃れようとする。
「うおおおぉぉぉ!」
しかし雄叫びを上げた響は、ブリッジした状態からそのまま体を回転させて上空に放り投げる。
空中に放り投げられたカイムイヴィルダーを追って、響はジャンプすると頭上を取るように飛び上がる。
そして右腕で首に手刀を叩き込むと、そのまま地面に叩きつけようとする。
「はぁー!」
首に手刀を叩き込まれたままのカイムイヴィルダーが、地面に叩き込まれた衝撃で、地面が爆発して土煙が上がる。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
倒れたカイムイヴィルダーの胴を踏みつける響。足を掴んで逃れようとするカイムイヴィルダーであったが、体重を乗せた踏みつけは簡単には外れない。
さらに響は何度も踏みつけてき、さらにはまるでボールのように勢いよく蹴り飛ばす。
まるで風船のように吹き飛んだカイムイヴィルダーは、そのまま壁に激突して倒れ込む。
「うううぅぅぅ……」
うめき声を上げながらカイムイヴィルダーは立ち上がろうとするが、ゆっくりと歩きながら近づいた来た響によって、無理やり立たせられる。
カイムイヴィルダーの胸元を掴んだ響は、掴み上げた状態から殴りかかる。
一発、二発、三発、と連続で殴り続ける響。
しかしカイムイヴィルダーも余力で持っていたサーベルを、掴んでいる響の腕に突き刺すのだった。
「っち……」
サーベルが突き刺さった腕からは、血が流れ出し地面を赤く染め上げる。
すぐに響はカイムイヴィルダーの体を振り回すと、地面に叩きつけるのだった。
叩きつけられた衝撃で土煙が舞い、二人は距離を開ける。
立ち上がったカイムイヴィルダーはサーベルを構え直し、響はキマリススラッシャーを生成して両手で持つのだった。
「ぐぅ……」
「はぁ……」
動き出したのはカイムイヴィルダーが先であった、まるで飛んでるかのようにジャンプをすると、響に向かってサーベルを振り上げて斬りかかる。
しかし響もキマリススラッシャーで切り上げて攻撃を防ぐ。
剣とサーベルがぶつかり合い、甲高い金属音が周囲に鳴り響く。
ぶつかりあった衝撃で後ろに吹き飛ぶカイムイヴィルダーであったが、ふわりと音もなく着地すると、サーベルを再び構える。
「やぁぁぁ!」
次に動いたのはカイムイヴィルダーであった。
勢いよく走り出すと響に向かって斬りかかる、だが響は紙一重で振り下ろされたサーベルを回避する。
そのまま続けて斬りかかるカイムイヴィルダーだが、放たれる斬撃は一つ、二つ、三つ、と全て回避されていく。
「当たれぇ!」
攻撃が当たらないことに業を煮やしたのか、カイムイヴィルダーは怒号を上げながら斬りかかって行く。
大きく振りかぶった攻撃を見て響は、体を少しひねることで回避すると、そのまま足でサーベルを蹴り上げる。
蹴られたことで大きく宙を舞うサーベル、とっさにサーベルに視線を向けてしまうカイムイヴィルダーであったが、気づいた瞬間には目の前に斬りかかろうとする響の姿があった。
「おりゃぁぁぁ!」
白い閃光がきらめくと同時に、カイムイヴィルダーの胸が左から横一文字に切り裂かれる。そして胸からはおびただしい量の血が流れ出るのであった。
勢いよくキマリススラッシャーを振りかぶった響は、そのまま続けて連続で斬りかかる。
右から横一文字、さらには続けて袈裟斬り、そして最後には突きによって刀身がカイムイヴィルダーの体に突き刺さる。
突き刺さった刀身からは血が滴り出て、鏡のように美しかった刀身を赤く染め上げる。
「ぐふぅぅぅ……」
口からも血が溢れ出し、呼吸が難しくなっていくカイムイヴィルダー。
その様子を見て響は、この戦いはもう長くないと確信するのであった。
キマリススラッシャーを抜いた響は、後ろに下がると再び構えを取る。
逆にカイムイヴィルダーは、出血が止まらない胸を両手で抑えて止血しようとしていた。
「これで終わりだ!」
響はデモンギュルテルからイヴィルキーを取り出すと、キマリススラッシャーにイヴィルキーを装填する。
〈Slash Break!〉
起動音が鳴り響くとともに、キマリススラッシャーの刀身が光り輝きエネルギーをまとい始める。
完全にエネルギーがまとった事を確認した響は、カイムイヴィルダーめがけて走り出す。
カイムイヴィルダーも苦しむ様子を見せながらも、サーベルを持ち上げて迎撃に向かうのであった。
「はあああぁぁぁ!」
「うおりゃあああぁぁぁ!」
雄叫びを上げる両者は、一閃と共に交差する。
一瞬の静寂とともにカイムイヴィルダーは倒れるのであった。
倒れたカイムイヴィルダーが光りに包まれる、そして光が収まるとそこには新聞部の部長とカイムのイヴィルキーが落ちていた。
響が新聞部の部長が生きているかどうか確かめるために、仰向けにした瞬間新聞部の部長の懐から紙切れの山が空中に舞い散る。
紙切れが気になった響は、一枚の紙を手に取る。
「なんだこれ?」
それは響が戦っている姿を写した写真であった。しかし記憶と写真の位置取りを合わせてみるが、カメラのたぐいがあった記憶は響には無かった。
他の紙も響が手にとって見ると、どれも響が戦っている写真ばかりであった。
中にはまるで映像のように連続で撮られたような写真もあり、響をゾッとさせるには容易かった。
新聞部の部長の息があることを確認した響は、辺り一面に散らばった写真を集めると全て自分の懐に収めるのだった。
「さぁてこっからが忙しくなるぞ」
倒れた新聞部の部長と、戦いの余波と血で赤く染まった地面とボロボロになった周囲を見渡し、響は遠い目をするのだった。
とりあえず響は新聞部の部長の体をおぶると、誰にも見られないように急いでその場を後にするのであった。
そしておぶったままスマートフォンを取り出すと、千恵にメールを打つ。
(大学部の校舎裏に処理班お願いしますっと)
内容は大学部の校舎裏でイヴィルダーとの戦闘があったこと、そしてその後の処理を依頼するのであった。
すぐに返信は返ってきて響が文面を確認すると、「大丈夫? 怪我はない?」と書かれており心配している文面であった。
(心配しすぎだなぁもう)
心配した千恵からのメールを見て苦笑しながらも響はゆっくりと保健室に向かうのだった。
しかし響自身も血を流しすぎたせいか、足取りは遅く鈍いものであった。
(おっと行けないと連絡しないと)
響は千恵に豊崎千歳の連絡先を聞くと、急いで謝罪と校舎裏にいけないことを伝えた。
「ちょっと辛いな……」
弱音を吐きながらも響は、しっかりと一歩ずつ前に進んでいくのだった。
誰もいなくなった大学部の校舎裏で、何者かがこっそりと訪れる。
「ふふふ、すごい戦いだったわね」
訪れた人物は後数分後に訪れる予定であったはずの豊崎千歳であった。
彼女の目はまるで憧れのヒーローを見た子供のようにランランと輝いて、まるでその様子は童女のようであった。
「でも残念だわ、彼からはいつも写真を頂いていたけれども、でも仕方がないわよね私に歯向かおうとしたもの」
豊崎千歳は新聞部の部長の事を思い返すが、すぐにワクワクした表情に戻る。
それまでの表情はまるで子供が要らなくなったゴミをゴミ箱にポイするかのようであった。
「でもワクワクするわね、今度は彼と戦えるのですもの。もう堪らないわ!」
豊崎千歳の表情は頬がほんのりと赤く染まり、まるで男を誘うかのように淫靡なものであった。
彼女の表情と彼女の体型が相余って、
「た・し・か・ここだったわよね」
豊崎千歳は響が流した血の海に近づくと、屈んで小指で血をすくう。
そしてそのまま両頬に化粧のように血を伸ばして、さらに口に血のついた小指を突っ込むのだった。
響の血を舐めた豊崎千歳はまるで絶頂したかのように体を震わせると、そのまま地面にへたり込む。
「うふふふ……あはははははは……」
そして血のついた小指を服が汚れるのを気にせずに自分のスカートの中に突っ込み、まるで撫でるような動作をするのであった。
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