ぶつかり合うサーベルと銃

 レライエマグナムの引き金を引きながら響は、カイムイヴィルダーとの距離を詰めていく。

 照準を合わせずに発砲された弾丸は、無秩序にカイムイヴィルダーの周辺へと命中し、爆発を起こす。


「加藤響、お前を倒す!」


 カイムイヴィルダーは弾幕を両手で防御しながらも、怒り狂って突撃する。

 激突する両者、まず攻撃しだしたのは響であった。


「うおりゃあ!」


 勢いよく放った響のヤクザキックは、カイムイヴィルダーのみぞおちに命中する。

 しかしカイムイヴィルダーも、負けじと腰に帯刀しているサーベルを取り出すと、そのまま連続で響を切り裂く。

 肩と胸の二箇所から深い切り傷が刻まれるが、響は痛みに耐えて、カイムイヴィルダーの翼に照準を合わせてレライエマグナムの引き金を引く。

 連続した発砲音と共に、カイムイヴィルダーの翼に弾丸が貫通して、翼に幾つもの穴が生まれる。


「貴様またしても……」


「そう何度も飛ばれたら困るんだよ!」


 響は小さくジャンプすると、そのまま回し蹴りを叩き込む。

 そしてカイムイヴィルダーの背後を取ろうと、頭上を超えるようなジャンプをする。


「まずはその邪魔な翼からだ!」


 響はレライエマグナムを腰に下げると、カイムイヴィルダーの翼を左腕で力強く掴む。

 翼を掴んだ響は、拳を強く握りしめると、翼を連続で殴りかかる。

 カイムイヴィルダーの翼は簡単に壊れないのか、響の連打を食らってもバラバラになることは無かった。


「離れろぉ!」


 響を振り払おうとしたカイムイヴィルダーは、羽が舞い散るほどの勢いで翼を羽ばたかせた。

 猛烈な勢いで動き出した翼に、掴めなくなった響は地面に転がる。

 転がった響に向かってカイムイヴィルダーは、サーベルを向けると突き刺しにかかる。

 舞い散る羽とともに襲いかかるサーベルを前にして響は、両手で刃先を掴みかかる。


「真剣白刃取りってね」


 サーベルを受け止められた事に驚愕するカイムイヴィルダーに対して、響は大胆不敵に笑うのだった。

 受け止めたサーベルを少しずつ持ち上げた響は、頭の上まで持ち上げるとそのままサーベルを蹴り上げる。

 蹴られたサーベルはカイムイヴィルダーの手を離れて宙を舞い、二人から離れた場所に落下する。

 落ちたサーベルに視線を向けてしまうカイムイヴィルダーだが、すぐにそれが間違った反応であることを理解する。


「こっちを見ろよぉ!」


 振り向いたカイムイヴィルダーの顔に、響の渾身のストレートが炸裂する。

 ストレートを受けてしまい地面を転がるカイムイヴィルダー、即座に響は腰のレライエマグナムを手に取る。

 倒れているカイムイヴィルダーに照準を向けると、問答無用で引き金を引く。


「くらえ!」


 襲いかかる銃弾に反射的に回避するカイムイヴィルダーであったが、全ての弾丸を回避することは叶わず、体に数発の弾丸を受けてしまう。

 命中した箇所からは血肉が舞い散り、地面を赤く染めていく。

 地面を転がりながら立ち上がったカイムイヴィルダーは、忌々しげに響を睨みつけると飛びかかる。


「よっと」


 突撃を横に避けることで回避した響は、レライエマグナムをカイムイヴィルダーへ狙おうとするが、左右に移動されて狙いがつかない。

 細かく動くことで照準から逃れるカイムイヴィルダーは、少しずつ落ちているサーベルに近づいていった。

 そしてカイムイヴィルダーは地面に落ちていたサーベルを拾うと、弾丸を切り落としながら響に向かって斬りかかる。


「はあああぁぁぁ!」


 振り下ろされたサーベルは、響の左腕を切り裂き鮮血が舞い散る。

 左腕に襲いかかる痛みに対して顔を歪める響だが、すぐにレライエマグナムの照準をカイムイヴィルダーに向けて引き金を引く。

 銃口から吐き出された弾丸は、カイムイヴィルダーの肉体に命中して、命中した箇所の血肉をえぐり取る。


「ぐううう」


「痛ったいなぁ!」


 舞い散る鮮血と血肉を前にして、響は冷静にカイムイヴィルダーのこめかみに向かって回し蹴りを放つ。

 痛みで動けなかったカイムイヴィルダーは、右側頭部に強烈な一撃をモロに食らってしまう。

 蹴りを放った勢いで響は後ろに跳ぶと、そのまま地面を転がって距離を取る。

 既に二人の流した血のせいで、周囲の地面は赤く染まっている。


「はぁはぁはぁ……」


「はぁ……はぁ……」


 息を整えようとする響だが、そうはさせないとカイムイヴィルダーが距離を詰めてくる。

 近づいたカイムイヴィルダーは響に向かって、素早い動きで連続で斬りかかる。

 後ろに下がって攻撃を回避しようとする響であったが、即座に前に詰められて薄皮一枚を斬られてしまう。


「クソ痛えな!」


 一気に後ろに下がり距離をとった響が胸を見ると、薄く斬られた傷が幾つもあり、そこからは赤い血が僅かに流れ出ていた。

 血が流れる傷口を指でなぞった響は、血で赤く染まった指を見ると、決心したかのようにキマリスのイヴィルキーを取り出す。


「こっからは第二ラウンドだ!」


〈Kimaris!〉


 キマリスのイヴィルキーを起動させた響は、デモンギュルテルに装填されているイヴィルキーと入れ替える。


「憑着!」


〈Corruption!〉


 デモンギュルテルから起動音と共に、デモンギュルテルの中央部が開き、そこから騎士の姿をしたケンタウルスが現れる。

 そして騎士はバラバラにパーツへと分解されると、響の体に装着されていく。

 両腕、両足、肩、胴体、各パーツが装着されて、響はキマリスイヴィルダーへと変身するのであった。


「うううぅぅぅ……」


 キマリスイヴィルダーに返信した響を見て、カイムイヴィルダーは一旦は怖気づくが、すぐに斬りかかるのだった。

 振り下ろされるサーベルを響は、強固な鎧で包まれた腕の部分で受け止めると、返しにカウンターとしてパンチを叩き込む。


「ぐぅ……」


 体に力を入れられなかったカイムイヴィルダーは、苦痛に悶ながら攻撃を受けてしまう。

 追撃と言わんばかりに響は、連続でパンチを無防備な体に放つ。

 一発、二発、三発、素早い動きで放たれる拳は、カイムイヴィルダーの体に全て突き刺さっていき、ダメージで口から吐血するのだった。


「まだまだ!」


 最後に力いっぱい殴った響は、体制を崩したカイムイヴィルダーの向かって、両足を揃えて飛び蹴りを放つ。

 渾身のドロップキックを食らったカイムイヴィルダーは、そのまま校舎の壁に叩きつけられる。

 そのまま校舎の壁は衝撃に耐えられず、ひび割れてぽっかりと穴が空いてしまう。


(ヤベェ!)


 流石に校舎まで壊す気が無かった響は、罪悪感に苛まれるが即座に動き出す。

 壁から這い出たカイムイヴィルダーに向かって、ジャンプして頭を両足で挟み込む響。


「そぉれっ!」


 そのまま体を後ろに体を反らして回転すると、その勢いでカイムイヴィルダーの頭を地面に叩きつける。

 フランケンシュタイナーを受けてたカイムイヴィルダーはそのまま地面に倒れ込んでしまう。

 倒れたカイムイヴィルダーを響は立ち上がらせると、首を左腕でロックしてそのまま殴りかかる。

 ロックされていることで逃れることが出来ないカイムイヴィルダーは、拘束を解こうともがくが簡単には拘束は解けない。


「は、離せ!」


 両手を使って拘束を振り払うカイムイヴィルダーであったが、その間に何発ものパンチを叩き込まれた。

 振り払われた響であったが、すぐに後ろに下がり距離を取ると構えを取る。

 それを見たカイムイヴィルダーもサーベルを構えて、響の様子を伺う。


「おりゃぁ!」


 先に動き出したのは響であった、走り出した彼は人並み以上の速さで近づくと手刀を振り下ろす。

 しかしカイムイヴィルダーも反応して、攻撃から守るようにサーベルを盾にして防ぐ。

 手刀とサーベルがぶつかり合うと、その余波で二人に衝撃が走る。

 衝撃で後ろに下がる響とカイムイヴィルダー。

 響はサーベルと打ち合った自分の手を見るが、その手は小さくはない傷ができていて、血も流れ出ていた。


「切れ味はあるってことか……」


 手から流れ出る血を一瞥した響は、痛みに耐えながらも再び構えを取るのだった。

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