第27話、皇帝と第三王女

その日、各隊の隊長20名が招集された。


「いよいよ帰国か」


「ああ、やっと家族に会える」


すべてを知る魔法師団のコウ隊長だけはじっと黙っている。


そこへモウジュが登場する。


「わざわざ集まってもらいすまない。

緊急事態が発生した。

我らは当分帰国できない。

家族をおいてきている者には心から詫びる」


「どういう事でしょうか。

長い者はもう2年以上帰国しておりませんが」


「わしから説明する前に、本人にあってくれ。

陛下」


「「陛下だと」」 「「「なぜ陛下が……」」」


ジャン皇帝が入室する。

母さんが後に続いている。


「ミシティー国第三王女、ジェシカ・クールカン様じゃ」


「「「第三王女だと!」」」  「我々の探していた……」


ジャン皇帝が口を開く。


「わしは、この3年の間、城の地下牢に監禁されていた。

それを救い出してくれたのが、そこにいるシンジ・オーガミ君だ」


「さ、3年とは……」 「いや、出兵の時陛下にお目にかかったが……」


「混乱するのも無理はない。

現在の皇帝は偽物なのだ。

おめおめと捕らわれた我を許してほしい」


「モウジュ殿こちらが本物という証拠はあるのですか」


「親族であるわしの証言では不足か?」


「偽物の陛下に気づかなかった我々にも非があると思うが」


コウ魔法師団長の発言にみな沈黙する。


「コウよ、そういうな。気づけなかったのはわしも同じじゃ」


「今更、それを言い合っても仕方ないこと。

何より、ここにいるジェシカに迷惑をかけたこと、心から詫びる」


「ミ、ミシティーを攻めろと指示したのは……」 「偽物……」


母さんはコクリと頷いただけだ。


「では、本国に対して戦を……」


「いや、それだけは避けねばならん。

そのためには、その方らの協力が不可欠じゃ」


「いったいどうすれば良いのですか」


「焦るな。明日、ジェシカ王女に、ミシティーの国民に対して説明をしてもらう。

まずは、こちらの基礎固めを行う。

そして、もし、帰国命令がきても無視してもらう。

なに、それほど時間はかけぬ。

偽皇帝を、わしと魔法師団とそしてシンジ・オーガミで倒す」


「魔法師団だけに任せて良いのですか」


「一部のモノには、協力を頼むと思う。

本国の兵士たちに真実を伝え、こちらの味方に引き込むのじゃ。

このうち、半数は隠密裏に帰国してもらうだろう。

皆は、今日のうちに、全兵士に伝達してくれ。

明日のジェシカ王女の演説前にじゃ」


「ですが、万一偽物の討伐に失敗した場合は……」


「案ずるな。その場合はわしを偽物として捕らえ、本国に引き渡せば良い」


「私が一緒に連行されれば、ミシティーの反乱ということで収まるでしょう。

皆様にご迷惑はかけません」


「そ、そんなことをしたらお二人は……」


「数万の命と、二人の命。重いのはどちらでしょう。

何より、息子であるシンジ・オーガミが命を賭して挑むのです。

母親が命を賭けるのに問題などありませんよ」


「息子……」 「お、王子とは……」


こうして、偽皇帝討伐作戦は開始された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る