第143話 五輪
2022年2月4日金曜日。
北京冬季五輪が開幕した。
中国初の冬季五輪、ということで盛り上がりは見せたのだが、
・ウイグル族への人権問題
・香港問題
が、西側諸国を中心に問題視され、不参加を公表する国々が続出。
モスクワ五輪の時では、不参加したのは、
・アメリカ
・日本
・カナダ
・ブラジル
・チリ
・西ドイツ
・ノルウェー
・トルコ
・中国
・サウジアラビア
・エジプト
・チュニジア
・モロッコ
・イラン
・パキスタン
・台湾
・韓国
・フィリピン
・インドネシア
・南アフリカ
等。
これを見れば、多い印象を受けるが、先進国の基準の一つである
[参加] [不参加]
・イギリス ・アメリカ
・フランス ・ドイツ(当時は西ドイツ)
・イタリア ・カナダ
・スペイン ・日本
・ポルトガル ・ノルウェー
・オランダ ・トルコ
・ベルギー
・ルクセンブルク
・スウェーデン
・デンマーク
・アイスランド
・アイルランド
・スイス
・オーストリア
・ギリシャ
・フィンランド
・オーストラリア
・ニュージーランド
と、24か国(当時)中18カ国は、参加している。
参加国は、自国の国旗を使用せず、五輪旗で代用したりして、モスクワ五輪に選手団を送った。
OESDも一枚岩ではなかった、ということだろう。
然し、今回は、中国発の新型ウィルスの世界的流行もあってか、反中感情を示す国が多く、西側諸国は、殆ど不参加を表明した。
2008年の夏季五輪でも、チベット問題が取り沙汰され、聖火リレーが妨害に遭う等があったが、結局、無事に開催は終わった。
然し、今回はその比ではない。
一時は、開催自体が危ぶまれるほど、不参加国が多いのだ。
———
『【令和初の冬季五輪開幕】
参加国が、
・ロシア
・ベラルーシ
・キューバ
・シリア
・スーダン
等、限られた国となっている今大会では、その為、注目度が下がっている。
日本同様、ギリギリまで見極めていた韓国は、タイムリミット直前に参加を表明し、モスクワ五輪とは違い、選手団を派遣した。
不参加を呼び掛けていたアメリカ政府の顔を潰した形になるが、今の所、ホワイトハウスは何もコメントを出していない―――』
———
朝刊は、冷静に且つ淡々と、報じていた。
「パパ、選手が可哀想だね」
「そうだな」
年齢によっては、今大会で引退を考えていた選手も居ただろう。
実際、モスクワ五輪に出られなかった日本人選手が、その大会を最後に引退したり、東京五輪が延期された際、海外のある選手が、「モチベーションを維持出来ない」とし、引退を表明している。
「まぁ、災難だな。スポーツ選手は」
朝刊を閉じて俺の膝にシャルロットが乗る。
「よっこいしょ」
「重い」
「淑女に失礼」
シャルロットは、手刀を俺に叩き込む。
それから、手を繋いだ。
「今日の予定は?」
「仕事だよ」
今日は、中野学校に行って、指導する日だ。
「夕方、帰って来る」
「デートしたいなぁ」
「夜だね」
「してくれるの?」
「ああ」
提案した癖にシャルロットは、戸惑う。
「疲れてない?」
「疲れてるよ」
「じゃあ、また、後日―――」
「構わん。シャロンも来るか?」
「何処行くの?」
「何処が良いの?」
「う~ん……秋葉原」
「賛成」
2人の意見が一致した所で、エレーナがやって来た。
「少佐。ちょっとおめかししてみました」
「お、コンタクト?」
「はい♡」
何時もの眼鏡は無い。
眼鏡に慣れて来たのに、又、元に戻ったので、違和感は禁じ得ない。
「……」
「似合わない?」
「いや、今まで眼鏡だったから急だと違和感があってな。そのままでも良いけど、俺としては、伊達眼鏡の方が好みだ」
「そう? じゃあ、そうするよ」
直ぐにエレーナは、メガネケースを取り出し、伊達眼鏡を取り出す。
「用意が良いな?」
「FSBの差し金だよ」
「……」
素直だ。
あと、FSB、後で抗議せねば。
俺の性癖まで調べやがって。
FSBに嫌悪感を抱いていると、
「……」
『……』
遠くの方で、シーラとナタリーが仲良く(?)伊達眼鏡を着けては、姿見で確認していた。
「勇者様って眼鏡、好きなんですか?」
オリビアが絡んできた。
最近、構ってもらってないので不満顔だ。
「嫌いじゃないよ」
「では、
「良い。つけなくて」
「きゃ♡」
オリビアを抱き寄せて、その頬にキス。
「知的な感じも好きだけど、普通も好きだよ」
「……勇者様♡」
オリビアと再度、キスする。
これが、休日の俺達の過ごし方だ。
・煉
・エレーナ
・シャロン
・スヴェン
が中野学校で臨時講師に出向いている間、北大路家では、女子会だ。
回診を終えた皐月は、白衣のままホワイトボードの前に立っていた。
「さて……皆、居るわね?」
会議室に集まったのは、
・司
・オリビア
・シーラ
・ライカ
・シャルロット
・ナタリー
煉が知らないことだが、女性陣は、喧嘩対策の為に定期的に女子会を開いていた。
大奥のようになりつつある為、陰湿な冷戦になる前に仲良くするのが、この会の目的だ。
進行係は、ライカ。
会長は、皐月である。
「じゃあ、今回の提案は何かある?」
「はい」
「司、何?」
「もうすぐ複婚が合法化するでしょ?」
「うん」
「たっ君は、優しいから私達を同時に愛してくれるけど、流石に毎日、何人もは相手に出来ないでしょ?」
「うん。そうだね」
毎日、相手をし過ぎた結果、子供が出来る前にEDになると困ってしまう。
その為にも何らかの対策は、必要不可欠であった。
「だから、輪番制を導入しようと思うの。その方が、たっ君にも良いかな、って。喧嘩にもならないでしょ?」
「……そうだね」
これは、皐月も想っていたことだ。
第二子を望んでいる彼女も、妊娠前に煉の物が使い辛くなるのは、本意ではない。
然し、賛成の態度は極力、出さない。
家長である皐月が、皆の方針が公になる前に言ってしまうと、皆が彼女の意見に靡いてしまう可能性があるからだ。
いわば、北大路家の女王陛下、という存在か。
「皆は、どう?」
「
「私もです」
オリビア、ライカは、早々と態度を示す。
ライカが、ホワイトボードに、
———
『【輪番制導入案】
賛成者
・司
・オリビア
・ライカ』
———
と書き込む。
これで3票だ。
「私は、今のままで良いかな」
やんわりと、反対意見を出すのは、シャルロット。
煉が恋しいらしく、その腕の中には、彼を模したダッチワイフが抱かれている。
北大路家では、煉似のダッチワイフの使用頻度が高い。
トランシルバニア王国の国立企業が受注を請け負い、親衛隊が送った彼の写真や身長、体重を基に精巧に作っている。
当然、複数人が共同で使用している為、衛生面も必要以上に気を遣っている。
使用後は、毎回、国立企業が回収し、新たな物と交換しているのだ。
その都度、洗って、再使用も出来なくはないが、共同使用は、やはり使用者を幻滅させなねない為、使用後は、毎回、新品と交換しているのである。
ライカが問う。
「理由をお聞かせ下さい」
「輪番制だと体調不良とかで順番を逃してしまった時、嫌だから」
「成程」
反対者にシャルロットの名前を記入する。
これで、
・賛成3票
・反対1票
だ。
シーラも首を振る。
そして、皐月に耳打ちした。
「『輪番制だと気を遣って添い寝出来なくなる』……だって」
「分かりました」
これで、反対は2票に。
1票差だ。
『私も投票権あるの? 家族じゃないのに?』
ナタリーは、困惑していた。
皐月は、微笑む。
「家族でなくても広く意見を募っているから構わないわ」
それに、とナタリーの頭を撫でる。
「慕っている煉をコントロールしたいでしょ?」
『……ふん』
真っ赤になりつつ、そっぽを向く。
シーラは睨み付けるが、司は、皐月同様、微笑んでいる。
『少佐がEDになって治療で仕事に支障が出たら困るから、輪番制には賛成よ』
女性陣の中で、唯一、自分の想いを公にしていない(知っている者は、皐月とシーラのみ)ナタリーは、一度たりとも、煉と寝た事が無い。
ただ、ここまで公私共に仲が良い(?)為、いずれこの友情は煉次第では、恋愛に発展していくかもしれない。
「そう」
意地悪そうに皐月は、
実の娘のように可愛がっている為、ナタリーも嫌がる素振りを見せない。
「ナタリーちゃん、養子にならない?」
『え?』
「こんだけべったりなら、もう同居した方が良いんじゃない? (煉と一緒に住みたいでしょ?)」
『な!?』
小声で提案され、ナタリーは、顔を真っ赤にする。
一方、シーラは、
「……」
嫌悪感丸出しの顔だ。
「ま、貴女がその気ならね」
『……』
皐月の提案に割と本気で検討し始めるナタリーであった。
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