第4話 悟

「そうね。物腰が柔らかくて、あまり喋らないけど。

時々ね悟りを開いたような事を言うのよね」

「そうそう。オレはね、そこが好きなの。なんか、優しくてカッコいいのよ」

「その方は、タクさんの、幾つぐらい年上なんですか?」

「う~ん。そんな変わんないよな。でも、、10ぐらいは離れてるかな」

「そうね。若いんだけど落ち着いて見える感じかもね」

「職業は?」

「そんなの聞いたことなかったわね」

「聞かないんですか?」

「ぁ、うちの店はね。聞かないの。でもね、だいたい皆さんこちらが聞かなくても教えてくれるもんだわよ。名刺を出す人も役職自慢をする人も、仕事の愚痴を置いて行く人もいるから。なんとなくわかるけど。こっちから『何をしているのか』は聞かないわ」

「なるほど」

そこでタクちゃんが口をはさむ

「て、いう、あなたは何をされていらっしゃるんですか?」

「私ですか? ぇぇとぉ。 では、明かさないほうで」

「あはは! ママ!この人おもしろいね、」

「これ、タクちゃん。酔っぱらったの?もうお終いにして」

「そんなに酔っていませんよ。じゃあね、あなたはこの店ではやーさんで。やーさんと呼びましょう」

ママさんが眉の間にシワを作ってタクちゃんを見ている。

「あはは。ママさん、かまいませんよ。そう呼んでください」

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