第108話 辿り着いた先。
気がつくと、すり鉢状に段差のある公園の広間の真ん中に立っていたあたし。
周囲には屋台が並んでけっこう賑やかだったけど今この場所にはちょうど誰もいない。こちらを見ていた人もいなさそう。
広間の一番底にある此処は、たぶん普段ステージになっているのだろう。円形に組まれた石段はベンチの役目も果たすのかな? そんな感じ。
手のひらをじっと眺める。うん。あたし、生きてる?
精神的なものにも思えるそんな空間を通り抜け此処に辿り着いたって事なのかな? ふにゃぁだけど。
ねえ! デートリンネ! 聞こえてるの!?
あたしは此処でどうすればいいっていうのよ!
そう天を仰ぎ心の中で思いっきり叫ぶ。
あまりにも不親切すぎるよね? これって。
ああ。だんだんと腹が立ってきた。
……ごめんなさいねレティーナ。わたくしはその世界に干渉が出来ないのです。そうでなくとも因果が絡みあい過ぎて複雑になっている所にわたくしが直接干渉したら、この世界を崩壊させてしまう危険があって。
はう!? どういうこと? デートリンネ。
……主様が干渉し過ぎたのです。
そこまで聞こえたところで声が段々と小さくなる。
……あまりにも申し訳ないので、貴女に一つプレゼントを差し上げました。貴女の
はう、でも、あたしに此処で何かして欲しいんじゃないの?
帰っちゃたら困るんじゃない?
……ええ。貴女には主様を見つけて、助けて欲しいのです……
此処で完全に声が途切れた。
詳しく話せないのは干渉しすぎを警戒して? 好意的に考えればそんなふうにも受け取れるけどでもこれじゃあんまりだ。
結局あたしは此処でどうすればいいのかもわからないまま。
ふきゅう。
考えててもしょうがないから石段を上がって街を見て歩くことにした。いつでも帰ることができると言ってくれたデートリンネの言葉が心の拠り所になっているせいか、少し精神的にも余裕ができたのかな。
こうなったらとにかく今の状況を楽しもう。
旅行に来たって割り切っちゃえば、いいのかもね? うん。
石段を上がりきると屋台の美味しそうな匂いが漂ってくる。もうじき夕食時なのか買い物客も多い。
はあ。
よくよく考えたらあたし此処のお金も持ってない。言葉は……、文字とか発音とかは違うっぽいけどしゃべってる会話は何故か理解できる、か。
頭の中で自動に翻訳してる感じ?
でもどうしよう。このままじゃ宿に泊まることもできそうにないし。
そう思って周りを見渡すとちょっと寂れた教会? のような建物が見える。
あたしはとりあえずその建物に向かって歩いて行った。
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