第100話 暗転。

 うーん。


 硬直させちゃった。


 ……返事に困ってる風、ですわね。


 うん。ねえ、サンドラ。ひょっとして場所変えた方がよかったかな?


 ……そうですね。流石に大勢の前でのカミングアウトはまずいですしね。


「ああ、ごめんなさいね。言いにくいですよね。あとでわたくしの自室でお話しません……」


 バタン!!


 最後まで言い切る前に庭園の入り口扉が大きい音を立てて開いた。


「ラインハルト、様……」


 コルネリアが呟いた。知り合い?


「サーラ久しぶりだな! やっと帝都に帰ってきたから会いに来たぞ!」


「お久しぶりですラインハルトさま。お会いできて嬉しいです。でも、ちょっとお行儀わるいですよ?」


 ラインハルトさまはちょっと頭をかいて。


「まあ、そう言うなよ。ほんとお前に一番に会いに来たんだから」


 心の色も、ほんと会えて嬉しいって言ってる。正直だ。


 わたしも会えて嬉しいです。ほんとあれからいろいろあって……。ラインハルトさまに相談したい事もいっぱいあるんですよ。


 ……ああ。後でゆっくり話そう。こちらも話しておきたい事があるんだ。


 ちょっと心配な色。


 なんだろう。


「ん?」


 ラインハルトさま、コルネリアに気がついたみたい。


「もしかしたらコルネリア姉妹のうちの誰かか?」


「姉達をご存知なんですね。ラインハルト様」


「ああ、有名だからな。しかし、騎士科には居なかったと思ったが……」


 騎士服を眺めながら。


「もしかしてお前コウラスか?」


 あちゃ。あたりみたい。コルネリアが真っ赤になってる。


 そっか。騎士科の先輩後輩なのかな。七つ八つ年が離れてても九年間通う学園だし、何処かで接点があってもおかしくはないか。


 ……相変わらずかわいいなー


 小さい時からそういう扱いだったのですか?


 ……ああ、騎士科のアイドルだよ。


 あは。そっか。


「よく似合ってるよコウラス。もっとよく見せてくれそのピンクの騎士服」


 真っ赤に俯くコルネリア。


 ちょっとおふざけすぎですよ? 嫌がってるじゃないですか。


 ……ああ、恥ずかしがってるのもまたかわいいんだよ。こいつ。


 もう。ラインハルトさまったら。


 と、そんなおふざけのやり取りをしてたその時。




 ……あ、ダメ。サーラ、リウィアが危ない!


 サンドラのその声と同時に、わたしの目の前は真っ暗になった。

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