第33話 ぎゅっとつまんで。
空間っていうのは生き物と同じだ。
裂けたりほつれたりする事もあるけれどたいがい自身の修復力によって治るもの。
だけどそのほつれから魔が溢れどんどん広がっている状態じゃぁ治るものも治らないし。
あたしがすることは、そのほつれた空間をギュッと縮めて、そんでもってそこに結界をはってあげること。
そうして空間の治癒力をほんの少しあげてあげるだけだ。
それ以上の大魔法は流石に無理。マナがもたない。
周囲にハエのように群がる魔獣たちを掻い潜り進む。
ハウンドウルフやホーンドラビットなど小型の魔獣ばかりなのはここがまだ魔力溜まりになってあまり時間が経っていないからだろう。
大きいものでもサイホーンくらいのものだから、そこまで脅威じゃない。
あたしはドラゴンスレイヤーを片手にまっすぐ中心に向かって飛ぶ。向かってくる魔獣を時々切り捨てながらすすむのだけど、ほとんどの魔獣はあたしのところに来る前にティアが叩き潰してくれていた。
螺旋状にあたしの周囲を飛びながら周囲の魔獣を叩くようにして倒してく。その鋭い爪でえぐられる魔獣達は一瞬で弾け飛ぶものがほとんどだった。
中央の魔力溜まりは目に見えるほど実体化した魔が池のように溜まっていた。
銀色に鈍く光るその池から、ぼこぼこ、ぼこぼこ、と、魔獣が沸いている。
あたしはまず範囲結界を張って周囲の魔獣の妨害を防いでから、右手から高熱量のファイアボールをその池に向かって叩き込む。
湧いてきた魔獣達が蒸発したところでまずその魔を凝縮させて、と。
掲げた左手に魔が集まって、そしてそれは禍々しいバスケット大の魔石になった。
そのままギュッと空間をつまむ。
空間をつなぎとめる結界をはる魔法陣を重ね掛けして、仕上げにその空間の場所に癒しの聖魔法の力を注ぎ込んだ。
はう。これで……。
あたしはその魔石を抱いて結界の外に出て、そのまま最初の範囲結界を縮めていく。
宝石のように輝くその結界を固定するのに必要なのは……、と。
抱いた魔石を高く掲げたあたし。そのままその魔石を浄化して。
黒く漆黒に鈍く輝いていたその魔石が段々と透明に近い色合いとなり、薄く黄緑色になったところで。
あたしはその魔石を結界を押し込めるようにして地面に置いた。
うん。
これで、大丈夫、かな。
空間が落ち着いて、もう魔が溢れてくるのも止まってる。
周囲の魔獣はティアがほとんど薙ぎ払ってくれた。
カイヤやおじさん達も大丈夫そう。
全ての魔獣が魔石に変わったその時には、もう日が落ちる寸前になっていた。
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