第27話 ガリア風土記。
ガリアは全部で三つにわかれ、その一にはベルーガ人、二にはアクィータ人、三にはその仲間の言葉でケルタル人、それらを総称して帝国ではガリア人と呼んでいる。
どれも互いに身体的な特徴や生活様式までもが違う。
ヒョウのようにしなやかな体躯、白い肌を持つベルーガ人。頭にはふさふさとした獣のような耳を持ち、その俊敏性を以って草原での狩が得意な部族である。体毛、毛髪は主に金髪が多く、その次が淡い栗色であったが、全体的に色素が少なめな印象だ。
マロロマ河周辺の草原を主な住処とするが、その多くは定住せずマハロと呼ばれるテントをはり暮らしている。
ガルーダ河の下流、海岸沿いに集落をつくり暮らすのはアクィータ人。彼らは青い髪に赤い肌を持ち手には水掻きがあるという。
水辺で暮らして主に漁猟を生業としている。
耳から喉下にかけて傷のようにあるのはエラで、海中でも呼吸ができるようになっている。
レーヌス河より南の山脈寄りに位置する一帯に暮らすのはケルタル人。
黒くふさふさとした体毛にがっしりとした体躯の彼らはその身体の大きさに似合わず栗や粟ヒエを常食としている。
稀に単独で猛牛や大鹿などを狩ることもあり、その勇猛さでは他の部族にひけをとらなかった。
黒髪を常に頭の上でお団子のようにまとめている姿が特徴で、それも耳の上に二つ括るのが成人の証だという独特な風習があった。
このように容姿も風習も違うこれらの部族が何故一つにまとめられ呼ばれるのか?
それはもっぱらその宗教観に端を発していると言っていい。
天と魔がまだ混在していた遥か昔、この世界を創り上げた創世神があった。
その神が望んで産まれたのが
生きとし生けるものの根幹、
それを生みまたそれが還る場所。円環。
その円環の理をおさめる為の器。それがこの世界の真の
自らをその真皇の子孫であるとするのが彼らの宗教観であり彼らガリア人がガリア人であるというアイデンティティになっている、のである、と……。
お風呂をあがって休憩所で手に取った『ガリア風土記』っていう本の書き出しはこんな感じだった。
なかなかカッコいい出だしでついつい読み耽っちゃうけれど、著者をみるとユーリウス・カエサルって人らしい。
カエサルって初代皇帝とおんなじ名前だよねって思ったけどまさかね。いくらなんでも違うだろうしそれに帝国の歴史は4000年もあるんだもの、ガリアの人が4000年も同じ暮らしをしているわけも無いだろうし。
でも。
これから赴く土地のことを少しでも知れたのは良かったかな。何にも知らずに訪れてもね。
「ひゃぁびっくりだよね。聖王国じゃあんまり獣人の人を見ることもなかったけど、帝国だと当たり前にいるのかな?」
「世界は広いからね。あたしたちの目的地、龍神族ドラゴニュートの村だってあるくらいだしね」
「あ、ごめん。レティシアも龍神族だったっけ。あたい考えなしだったよ」
「ううん。大丈夫だよティア。それよりもあたし獣耳の人に会いたいかなぁ」
「あは。それはあたいも」
——ボクだって、人の姿になったら耳くらい……。
「あは。ごめんカイヤ。っていうか成れるの?」
——うー。今ちょっと研究中。龍のシズクを使ってた時の状況を自分の魔法結晶で再現すればいいんだから出来ないことも無いはずだと思うんだ。
「そっか。じゃぁ期待してるね」
「あたいも。応援してるね。じゃないと申し訳ないし……」
——うん。頑張るよ。もうちょっとだと思うんだよねー。
あは。うん。頑張って、カイヤ。
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