第313話 ひとつの終わり

 エスパルザが消滅し、聖騎士団による残党狩りが始まった。

 ヤツに加担していた者の多くは、かつてドン・ガーネスと組んで悪事に手を染めていた小物ばかりであったため、容易に進むだろうとフォーバートさんは話していた。


 聖女ルナリア様は大聖堂でいつも通りの生活を送っている。

 事情を聞いた周りの人々は信じられない様子であったが、彼女の持つ独特のオーラというか、神々しさの正体が「本物の女神だったから」と発覚したのをきっかけに信仰心はさらに増幅されたようだった。


 ちなみに、ルナリア様は女神から人間へとなった際、新たにデメティスという人物を女神として天界に残してきたらしい。いつか、後輩の働きぶりを見るために短期間でも天界へ戻ろうかなと俺に語ってくれた。


 で、俺たちはというと、あの戦いが終わってからしばらく聖都で暮らしていた。

 ルナリア様のご厚意により、大聖堂の一部を生活用の部屋として与えられたので、ここまでの長い旅の疲れを癒すため、もうちょっとだけ滞在しようと話し合って決めたのだ。


「旅、か……」


 大聖堂の中庭で仰向けとなり、真っ青な空を眺めながら呟く。

 思えば、この聖都を目指してずっと旅を続けてきたんだよな。


 レックスたちに見捨てられて、死にかけていたあの時――俺に生きる力を与えてくれたあの鍵の本当の持ち主は聖女ルナリア様だった。


「この鍵にはたくさん助けられてきたな」


 さまざまなクセの強いダンジョンを巡って来たけど、この鍵のおかげでなんとか乗り越えてきた。三種の神器も力を貸してくれたし、本当にありがたい。


 ――っと、俺の旅の相棒は鍵だけじゃないな。


「こんなところで何をしているの、フォルト」


 寝転がる俺に声をかけてきたのはミルフィだった。

 彼女はニコッと微笑んで、俺のすぐ隣に腰を下ろす。


「他のみんなは?」

「聖都へ繰りだしていったわ」


 どうやら、みんなは聖都での生活を満喫しているようだ。

 イルナは聖騎士団の鍛錬に付き合い、アイテムマニアのジェシカはここでしか手に入らないレア物を掘り出し物市で堪能している。歌の精霊女王であるマシロはルナリア様のもとで大聖堂の仕事を手伝っており、トーネは近隣の森に住む野生動物たちと心を通わせている。


 ここでの生活が気に入っているようだし、このまま聖都で暮らしていくのも悪くはないんじゃないかなって思えていた。


 ――けど、やっぱり物足りない。

 俺は……また冒険がしたいと思い始めていた。


「どうやら、フォルトは私と同じ考えみたいね」


 そんな俺の顔を見て、ミルフィが微笑む。

 ……なら、やるべきことはひとつだ。


「今日の夜……みんなに話すよ。これからどうするのか」


 俺は決意を胸に起き上がると、ミルフィにそう告げるのだった。







※次回――いよいよ最終回!!

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