第224話 迷い道
俺たちがここへ来るまでに通ってきた道が消失していた。
この衝撃的な事実に、メンバーは一時パニックとなる。
「なんで!? どうして道がなくなっているのよ!?」
「どういうことなんですか!?」
イルナとマシロは岩壁に手をつけながら叫ぶ。本当なら、このような岩壁はなくて、入り口まで一本道が続いていたはず。冒険者としてもっともキャリアの長いイルナでさえあれほど動揺しているのだ。
もちろん、ミルフィやマシロ、それにトーネも何が起きているか分からず混乱しているようだ。当然、俺も状況をしっかり理解できず、頭を悩ませていた。
――一方、この中で唯一冷静だったのがジェシカだった。
「……聞いたことがあります」
そのジェシカはゆっくりと静かに語り始めた。
「以前、お婆様の知人という方がうちの屋敷を訪ねた時、耳にしたことがあるんです」
「知人?」
「前にも言った、魔剣を使うという商人の方です。彼は時々、冒険者としてダンジョンに潜ることもあるようですが、その際、日によって構造が変化するダンジョンがあったと言っていました」
「その日によって構造が変わるダンジョン……」
日替わりで道順が異なる――それだと攻略はほとんど不可能だ。
いや、それより、
「もし、このダンジョンにも同じような特徴があるとするなら……俺たちはこのダンジョンから出られないんじゃ……?」
「「「「「!?」」」」」
俺の不用意なひと言で、不安はあっという間にメンバー全員に広まった。
「で、でも、入り口はあったんだ。必ずどこかに出口はあるはずだよ」
「そ、そうね。悩んでいても仕方がないわ。この先を進んでもと来た道を――って、えぇ!?」
再び、イルナが叫ぶ。
その声に驚いて振り返ると、さっきまで行く手をふさいでいた岩壁が消え去り、最初に通ってきた道が現れた。
「ど、どういうこと!?」
「わ、分かりません……」
さすがに、これはジェシカにとっても予想外の事態だったようだ。
話に聞いていたダンジョンは、日替わり――つまり、その日のうちに構造が変化することはない。だが、この沼のダンジョンはわずか数分の間に構造が変わっていたのだ。つまり、話に聞いていたダンジョンよりもさらに攻略が難解ということになる。
「と、とりあえず、一度このダンジョンを出よう! 冒険者たちが失踪している原因が分かったんだから、それを踏まえた上で対策を講じよう!」
俺の提案にみんな頷いてくれた。
また道が変わってしまわないうちに、出口を目指して俺たちは走りだした。
――が、
「待って! 何かおかしいわ!」
ミルフィが違和感を訴えてストップをかける。
……俺も、その違和感を察知していた。
「どういうことだ……ここって、さっき通ったところじゃないか!」
走り抜ける途中で見かけた特徴的な形状をした岩。
それが、走り続けていた俺たちの前に再度現れたのだ。
この岩に、他のメンバーも見覚えがあったようだ。
「な、なんで……」
マシロの口から悲痛な声が零れ落ちる。
これは……今までで一番厄介なダンジョンかもな。
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