第191話 解錠士《アンロッカー》として
カタルスキーさんやミルフィとともにガーネス・シティへと入った俺たち。
町の様子は事前に想像していた通り、かなり荒廃していた。
人相の悪い男や派手で露出の多い服を着た女性――かつてこれほど治安の悪そうな町へは立ち寄ったことがなかった。
シアターの歌姫だったマシロや幼い頃から冒険者として数々の町を移動しているイルナなら、このような雰囲気も慣れているかもしれないが……俺にとっては初めてのことで正直戸惑っている。
そのため、俺は緊張しながらカタルスキーさんのあとについていく。
――そんな俺以上に町の光景を驚きの表情で眺めていたのはミルフィだった。
特に彼女の目を引いたのが、派手で露出の多い格好をした女性たち。
言ってみれば、自分と対極の格好をしている者たちだった。
恥ずかしがり屋という性格もあってか、ミルフィは露出の多い服を好まない。
フローレンス家の別荘で水着になった時も、実はかなり悩んでいたみたいだし……戦闘時はイルナの格好にもハラハラしていたな。
この前も、風のダンジョンの中で――
『イルナのあの格好……ズレて見えちゃったらって心配にならないのかしら』
『ズレる心配の少ないスレンダー体型ですから平気なんですかね?』
『ちょっと! 聞こえているわよ!』
って、ことがあったな。
だから、目の前の女性たちの格好が信じられないのだろう。
……って、今にして思えば、ミルフィの性格を知っているのに、レックスの安い嘘にまんまと引っかかるなんて……なんとか今は一緒にいることができているけど、下手をしたら一生会えないままだったかもしれないんだよな。
改めて、俺は女神の鍵に感謝した。
しばらく歩いていくと、町の真ん中を流れる運河を発見する。
そこには何隻かの船が停泊していた。
事前に聞いていたことだが、あの船はすべて国の認可を受けていない、いわば非合法の運搬船。別大陸の貴族や王族が、ドン・ガーネスへ解錠依頼を求め、ここに送り込んでいるのだという。
「法外な報酬を請求されても、彼らはそれを突っ返すことができない」
橋を渡っている途中で、カタルスキーさんが語り始める。
それは、ドン・ガーネスと同じ
「解錠レベルが三桁を超える宝箱ともなれば、解錠できる者は限られている。それでも国の発展を思えば、連中に頼らざるを得なくなる」
「でも、聖女ルナリア様とか、きちんとした
「……その宝箱がきちんとした手段で入手したものであれば、連中もそっちへ依頼するだろう」
「えっ?」
「蛇の道に迷い込むのもまた蛇ということさ」
つまり、解錠依頼を出している他国の王族や貴族もまた非合法な手で宝箱を集めているってわけか。
「こうなってしまった世界を正すのは難しいだろうなぁ。――しかし、聖女様は諦めにならないだろうが」
「ルナリア様が……?」
「彼女の心意気に賛同するからこそ、これ以上ドン・ガーネスを放ってはおけん。ヤツが投獄されれば、世界に蔓延る悪徳な
それが、今回の狙いというわけだ。
俺もその点は同意する。
カタルスキーさん――そして、バッシュさんやマルクスさんが目指す目標に、俺もついていく。
と、その時、
「……どうやら、我々を歓迎してくれる者がついてきているようだ」
カタルスキーさんの目が鋭くなる。
俺やミルフィも、その気配に気づいていた。
俺たちは――つけられている。
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