第177話 次はどうしようか
バルテルとデクスターによる宝箱強奪事件。
多くの冒険者たちが被害に遭う――寸前のところで、主犯のひとりであるデクスターの身柄を拘束し、ヤツが切り札として繰り出してきたトロールも、俺の封印の鍵の力で宝箱の中へと消え去った。
さすがにこれはデクスターにとって想定外の事態だったらしく、トロールが宝箱の中に封印されたあとは放心状態で無抵抗のまま通報を受けて駆けつけた騎士たちによって連行されていった。
盗まれた宝箱はそれぞれ持ち主のところへ届けられ、今はラウーフの町の食堂で盛大な宴会が開かれていた。
「おまえは本当にすげぇヤツだよ!」
「まさかあのトロールを宝箱に封じ込めるなんてなぁ!」
「驚いたぜ!」
冒険者たちに「奢ってやる」と言われてついてきたが、代わる代わるお礼を言われたり、ドリンクをつがれたりで大忙し。俺のパーティーのメンバーということで、イルナたちも同じように手厚い歓迎を受けているようだった。
「しかし、あんたみたいな若いのが
「おまけにモンスターを宝箱に封じ込めるなんて……」
「あれには驚いたよ。まさかあんな凄い技を使える者がふたりもいたなんて」
「えっ?」
ふたり――ということは、俺に以外にも封印の鍵を使える人がいるってことか。
「そ、その
「うん? それだったら、君も名前くらい聞いたことあるんじゃないか――聖女ルナリア様だよ」
「ルナリア様……」
ここでも名前が出たか、ルナリア様。
聖女ってことらしいが……封印の鍵と同じ効果を持つ力を扱えるのか。
「それで、あんたらはこれからどうするんだ?」
「えっ? これから?」
「新しいダンジョンに挑むのか?」
「うーん……まだしっかりと風のダンジョンを見て回ったわけじゃないので、今度は改めて風のダンジョンへ挑もうかな、と」
「なるほどな。あそこはいいぞぉ。この辺りじゃ珍しいのんびりできるダンジョンだからな」
しみじみと語る冒険者。
それに頷く周囲の面々。
確かに、バルテルの件でバタバタしていたからそっちの印象が先行するけど、あそこの雰囲気はいい感じだった。俺たちの赤い宝箱も戻ってきたことだし、次に行く時は観光目線っていうのも悪くないかもしれない。
結局、俺たちは眠くなってきたので早めに食堂をあとにしたが、冒険者たちはそれから夜が明けるまで騒ぎ通していたらしい。
◇◇◇
翌朝。
俺たちは宿屋の食堂で朝食を終えると、風のダンジョンへの再挑戦を提案。
どうやらみんな同じ考えだったようですぐに了承してくれた。
「風のダンジョン……楽しみね!」
「今回はのんびりダンジョンを楽しみましょう」
「それがいいですね!」
「楽しみです」
「私も」
やっぱり、みんな前のことを気にしていたんだな。
あの時は入ってすぐにバルテルとその使い魔のコンビネーションに騙されて宝箱を奪われてしまったし。
というわけで、今回は仕切り直し。
再び風のダンジョンに挑戦するとしよう。
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