第138話 解錠士《アンロッカー》としての実力

「龍声剣に破邪の盾。それにその首から下げているのは天使の息吹かしら?」

「あ、あぁ……」


 誤魔化しはきかないと感じた俺は、素直に答えた。

 俺たちの距離が近づくと同時に、周りの仲間たちも集まってくる。

 こちら側はミルフィ、イルナ、ジェシカ、マシロ、トーネ、そしてゴルディンさん。

向こうはその他大勢の女性冒険者。

 互いが正面からにらみ合う形となり、見ようによっては一触即発の光景だ。


 ――しかし、


「そちらのみなさんも……ここまでたどり着けるということは、なかなかの手練れのようですわね」


 ウィローズ・リナルディは落ち着いていた。

 俺から三種の神器を奪おうとするわけでもなく、人懐っこい笑みを浮かべてこちらを眺めていた。それはきっと、彼女も俺に匹敵するお宝を持っているから、興味がないってことなのかもしれない。


 ――例えば、さっきボーン・ドラゴンの足を吹き飛ばしたあの武器とか。


「君だって……いい武器を持っているようだね」

「武器? ――ああ、これですわね」


 そう言って、彼女は俺たちに武器を見せてくれた。

 あの巨体の足を吹っ飛ばしたぐらいだから、とんでもない見た目をした武器なのかと思ったら、


「これは……」


 武器は意外なものだった。

 それは――鞭。


「これは《神蛇の鞭》というアイテムですわ」

「神蛇の鞭!?」


 真っ先に反応したのはアイテムマニアのジェシカだった。


「希少度は★9! 解錠レベルは800越え! 目にもとまらぬハイスピードと巨大モンスターすら一撃で戦闘不能に追い込む威力を誇る超ド級のお宝アイテムじゃないですか!」


 瞳を輝かせながら、めちゃくちゃ早口で解説をしてくれた。

 

「あら、随分と詳しいんですのね」

「ジェシカはアイテムマニアなんだ……」

「ふふふ、どうりで」

 

 イルナから「落ち着きなさい」となだめられているジェシカをお上品に笑いながら見つめているウィローズ。


 もしかしたら……彼女は王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーの中でも、バッシュさんに近い存在なのかもしれない。――とはいえ、リナルディ家という名を語るあたり、貴族の出身かもしれないので、多少、一般常識から外れたところはあるけど。


「それにしても……あなた」

「? 俺?」


 ウィローズの興味は、ジェシカから俺に移ったようだ。


「どれも解錠レベルが三桁後半の超お宝ばかり……たとえそれに匹敵する宝箱をドロップしたとしても、そこからお宝を手にするには腕の立つ解錠士アンロッカーに依頼しないといけませんわね」

「……依頼はしない」


 ここまでのかかわりを通して、俺はひとつ決断を下した。


「開けたのは――俺自身だ」


 ウィローズにそう告げて、俺は女神の鍵を取りだすと――ボーン・ドラゴンからドロップした銀色の大きな宝箱を開けた。


「!? 最低でも解錠レベル500を超える大きな銀の宝箱をいとも簡単に……あなたも解錠士アンロッカーでしたのね。――それも、わたくしたち王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーに匹敵する実力者とは……」


 苦笑いを浮かべてこちらを見るウィローズ。

 その顔つきは明らかにジェシカの時とは違う。

 

 少し……周りの流れる雰囲気が変わった。

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