第111話 我が家

 フローレンス伯爵の別荘で起きた幽霊(?)騒動。

 実際は伯爵の娘――ライサお嬢様を救うため、精神世界で思わぬ戦闘を繰り広げたわけだけど……なんとか解決してよかったよ。


 そのライサお嬢様だが、実は婚約者がいるらしい。

 病気療養という名目でしばらくこの島にいたが、回復したことでその相手とも会えるようになると親子揃って喜んでいた。

 ちなみに、婚約者というのは伯爵と同じく、解錠士アンロッカーが力を持ちすぎている現状を打開しようと考えているガレアーノ家という名の貴族。そこの長男であるギャリック・ガレアーノという人物と婚約を結んでいるとのこと。


 この両家が親族関係になれば、王国内での解錠士アンロッカー権力集中化に反対する派閥が勢力を増すのは間違いない。


 となれば……ライサお嬢様の精神世界を支配しようとしていたあの男は、フローレンス家とガレアーノ家の婚約に反対する勢力――即ち、私腹を肥やし続ける悪徳王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーが仕向けたものだろうか。


 どうやら、フローレンス伯爵も俺と同じ考えらしく、これからいろいろと探りを入れていくらしい。

 また、すぐにガレアーノ家へ使いを出し、ライサお嬢様の回復だけでなく、その件についても報告するのだという。



 真の意味で解決したわけじゃない。

 けど、これが大きな一歩であることは間違いない。

 俺もバッシュさん同様、フローレンス伯爵を支持していくつもりだ。




 こうして、俺たちの短いバカンスは終了した。

 伯爵はトラブルに巻き込んだことを最後まで気にしていたが、俺としては伯爵の力になれたことが嬉しかったので、その旨も伝えておいた。

 それに、うちの女性陣は今回のバカンスをとても満喫したようで、ライサお嬢様が「今度はゆっくりとお話がしたいですね」という言葉に、全員が声を揃えて「ぜひ!」というくらいだった。


 まあ、次の楽しみができてよかったよ。

 俺としても、今度は本当の意味でバカンスに来たいな。


  ◇◇◇


 かれこれ一週間ぶりに拠点でもある我が家へと帰って来た。

 侵入防止用の結界魔法を解き、室内へ向かうと――何やら異変が。


「……なあ、ミルフィ」


 俺は近くにいたミルフィへ声をかける。


「どうかした?」

「音がしないか?」

「音? ……言われてみれば」


 耳を澄ますと、かすかに聞こえる。

 これは……何か大きな物が動いているような……。


 俺とミルフィが音の出所を探っていると、他の三人もやってきた。

 三人も、耳を澄ますと音が聞こえるという……結界魔法が破られた形跡はないし、だとしたら――


「あっ!」


 俺は「ある物」を思い出し、それがしまってある場所へと急ぐ。

 場所は地下室。

 ここに、塔のダンジョンで手に入れたお宝を保管していたのだ。

 音の出所は――そのお宝だ!


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