第102話 孤島の夕食
結局、その日は体力の尽きるまで遊び倒し、パウリさんたちの待つ屋敷へと向かった。
「お帰りなさいませ」
ビシッとしたパウリさんのお辞儀で迎えられた俺たち。
すると、
「はっはっはっ! その様子だとしっかり満喫したようだなぁ!」
パウリさんの背後には、フローレンス伯爵が立っていた。
これには俺たち全員驚愕の表情。
「フ、フローレンス伯爵!?」
「? 何をそんなに驚いている? ここは私の別荘だぞ?」
「い、いえ、だって……」
言っていることは正しい。
ここはフローレンス伯爵の別荘なんだから本人がいたってなんら不思議じゃない。
ただ、事前に「行く」と言われていなかったので、面食らった感じだ。それに、伯爵の出で立ちは以前会った時のキチッとしたものではなく、薄手のシャツにハーフパンツというラフな格好で、そのギャップもまた俺たちを驚かせた。
「そんなことより夕食にしよう。ちょうどさっき準備が整ったところなんだ」
「は、はい!」
「こちらへどうぞ」
俺たちはパウリさんの案内で食堂へと移動。
そこはとても食堂とは思えないほど広く、置かれたテーブルの上にはおいしそうな料理が大皿に盛られている。いわゆるブッフェスタイルってヤツだ。
「「「「わあ~……」」」」
女子陣は豪勢な料理の数々に瞳を輝かせている。
孤島にあるということもあってか、海鮮料理が中心となっていた。
「さあ、遠慮はいらない。たんと食べてくれ」
伯爵が言うと、メイドさんたちがお皿を渡してくれた。
「何から食べようかしら?」
「目移りしちゃうわね」
イルナとミルフィは大きなエビやカニに興味を持っている。
「これは……いい匂いのソースですね」
「こっちの貝のソテーもおいしそうです」
ジェシカとマシロもどれを取ろうか迷っているようだ。
「さて、君は何から行くかね、フォルトくん」
「そうですねぇ……」
俺も続いて行こうとした――が、その時、あの視線のことを思い出した。この島へ着いてすぐに感じたあの強烈な視線。俺はそれがどうも気になっていた。
「あの、伯爵」
「ん?」
「この島に……俺たち以外で誰かを招きましたか?」
俺の言葉に、伯爵は一瞬目を大きく見開いた。
だが、
「いや、ここに君たち以外で招待した者はいないよ」
「そうですか……」
伯爵は淀みなくそう告げた。
最初の驚きは、俺が突拍子もない発言をしたからだろう。
「しかし、なぜそう思ったんだ?」
「実は……」
俺は正直に視線の件を伯爵に報告する。
「視線、か……」
先ほどの招き入れた者はいないかという質問に関しては即座に返答したが、視線という話題には何やら含みのある反応を見せた。
「何か心当たりが?」
「うーむ……あるな」
「えっ!?」
「それは――ワシだ」
「へっ?」
思わぬ答えに、俺の口から間の抜けた声が漏れる。
「ここだけの話にしておいてほしいのだが……久しぶりに若い子たちの水着姿を見て年甲斐もなく嬉しくなってなぁ」
「は、はあ」
俺の肩をポンポンと叩き、髭を撫でながら語る伯爵。
あの視線の正体は伯爵だった……?
どうも腑に落ちないな。
もしかしたら――何か隠しているのか?
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