第十一章 無意識のお願い
三十四話 いいと言われても…でも…
あれから二週間、私と先生の関係は特に進展はしなかった。
お母さんの実質的な了解は出ているとは言え、「はいそれならば」ってほど、ことは簡単じゃないもんね。
私は一度先生に振られている。そして先生は大人だもの。
年下の私が何度も告白をすることが迷惑になってしまうかも知れない。
ううん。それでなくても、好きな人への告白は軽々しくしたくない。今回は先生だもん。次は結果は分からなくてもきちんと気持ちを自分の言葉で伝えたい。
まだ私が中学生や高校一年生だった頃、クラスの中には毎年のバレンタインや学期ごとに告白をしては少し付き合って、ちょっとしたきっかけが元で失恋したと騒ぐ子たちもいた。
そんな子たちを横目で見ながら、「それでも告白できたんだよね」と羨ましく思ったりもしていた。
私にはそもそもそんなことができる自信がなかったから……。
結果的に十八歳の今まで誰ともお付き合いをしてこなかった私。
告白する勇気も、お付き合いをしていて「さよなら」を突きつけられたときに、それを受け入れるだけの心の大きさ、勇気がないというといのが本当のところだと思うよ。
昨年書いたあの手紙。
本当に初めての経験だった。
だって、断られることが最初から分かり切っているのに止めることができなかった。
先生に迷惑がかかると分かっていたはずなのに……。
それだけ、私の心を先生が暖めてくれていたのだけれど、迷惑をかけたことは謝らなくちゃならない。
お母さんも言ってくれたけれど、確かに今の先生と私は教師と生徒という関係ではない。そこは分かっている。
でも、先生に熱を上げているのはきっと私だけ。先生にはもっと年上の、大人の女性が好みに違いない。
毎日十分間の距離を一緒に歩いて帰っているけど、そこに出せる話題でもない。きっと沈黙してしまう。
それに、答えを聞いてしまったら……。この大好きな毎日の十分間が終わってしまう。
そんな感情がずっとループしてしまって言い出せなかった。
「どうした原田、最近帰り道静かじゃないか。体の具合でも悪いのか?」
こんな気持ちがぐるぐる回ってしまうと、つい沈黙の時間ができてしまう。
「え? そうですか? 私はこのとおり元気ですよ?」
「まったく、原田の悪いところはそういう空元気で誤魔化そうとするところだ。なにか気になることがあれば、今でも変わらずに相談していいんだ。それは原田のお母さんからも頼まれていることだし」
「はい、そうでしたよね。でも、本当になんでもないんですよ」
先生は私が口に出せないことがあるときっと気づいている。
でも、それを無理に聞こうとはしてこなかったし、表に出したときの結果を私自身が受け入れられるか、その自信がない。
でも、そんなやせ我慢は偶然のトラブルの前では何でもなかったことを思い知ることになったの……。
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