藤次郎-1

いつも読んでいただいてありがとうございます。


先日お伝えいたしました通り、本編は一か月ほどお休みをいただきます。その間、世界観を同じにするお凡そ350年後の時代を舞台とした物語の一部を掲載したします。

引き続き、ご愛読よろしくお願いいたします。


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「ここまでくれば大丈夫じゃない?」


馬の鞍にまたがり、後ろで手綱を捌く男に振り向きながら、後方の追手を確認して少女は声をかけた。黒い頭巾をすっぽりかぶり目だけを出したいで立ちに身を包んだ少女は、いつもの様にその男に笑顔で話しかけていた。もっとも、表情は全くといってわからないのだが、声の調子で後ろの男にはそれが手に取る様にわかっているのだ。


声をかけられた男は答えを出すことなく馬を走らせ続けている。


随分と走らせた。


馬が何処まで持つのかそれが今の心配事の一つでもある。確かに追手が来ている様な感覚は無いが、事が事だ。絶対にあきらめるはずがない。しかし、この広い国の中に目の前の少女と自分自身を隠す場所くらいはどこかにあるはずだと言い聞かせて鞭をふるう。とにかく領内から出る事だ。


馬は街道を外れ、夜の森の中を疾走する。それは賭けに等しい。しかし、男には賭けをしてでも逃げ延びなければならない理由があった。


それは鞍の前に座る黒ずくめの少女の存在だ。

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