伍場 五

 霞の笛の音が畔に響く。

暗闇の向こう、闇の中。金属のこすれ合う音がする……


どこだ。


暗がりの中でわずかに何かが光った。

鎧武者の兜が九郎の黄金色に輝く太刀の光を反射し光っていたのだ。


精は人型。鎧武者。それ以外はわからない。


だが、相手は既に太刀を抜いている。


「おおおおりゃあ!」


九郎が雄たけびを上げ飛び掛かる。

一太刀め武者が太刀で受け止めた。


九郎はひるまずに自ずから回転しその場で胴横に太刀で一撃を入れる。

だが、当たりどころが悪い。鎧そのものだ。


武者が後ろに下がる。


「まだだ!」


九郎が一気呵成に打ち込む。

武者も全て太刀で掃う。


今度は九郎が一旦、跳躍し下がる。


九郎は脇構えに構えると---


突っ込んだ。


上段から振り下ろしてくる武者の太刀筋を紙一重でかわすと横から一気に振り下ろした。


金属の高い音が瞬間響いた。


武者は兜で九郎の一撃を受け止めると、そのまま、身体を突進させ九郎を組み伏せようと腕を伸ばしてくる。軽量級の九郎は組み合ってはだめだと、吉右衛門に強く言われている。

しかし、軽業の九郎は掴まれた腕をそのままに武者の肩に手を掛けると、それをきっかけに跳躍し武者の背後へと空中で一回転し飛び去った。


「九郎!足を使いなさい!」


霞がたまらず声を掛ける。

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