陸場 二

「公卿様、頼種様を襲った下手人を探しています。知っている事があれば、お話しいただけますか?」


黒ずくめの二人組が馬場頼政の寝所に忍び込んでいる。馬場にしてみればいつの間にか寝所の枕元に黒ずくめが二人いたことになる。


「出あえ!! 者共!! 曲者ぞ!!」


「おやめください。既にこの屋敷は我らの手の者が包囲しております。どのようにお声を上げられても駆け付けられるものはおりません。我らは隠密裏に事を運ぶ影の集団でございます。我らは全てを見通しております。例えば公卿の平家打倒計画なども……」


顔色が変わる頼政。


二人は屋敷に潜入する前日に前もって頼政の心を読んでいた。


「我らは公卿のことについては活動範囲の外の事。何をされようと我らには、あずかり知らぬことでございます。ただ、この情報も使い方によっては公卿の御身が危うくなることも承知いたしております」


「お、脅す気か?」


「どう捉えていただいても結構です。現実を知っていただければ結構。今、我々に正直に答えていただくのが一番かと……」


「……」


「ご同意いただいたと承りました。それでは、最初の質問に戻ります。頼種様を襲った下手人を探しています。知っている事があれば、お話しいただけますか?」



「何も知らん。」


「そうですか? では、何故あそこに頼種様はいらしたのですか?」


「頼種の郎党を殺した奴がそこを通ると聞いたのでな」


「それは誰に聞いたのですか?」


「それは言えんな。」


黒ずくめがもう一人と目配せをしている。


「わかりました。それなら仕方がないですね」


「質問を変えます。先日も法皇の王子とお会いされていましたよね? どのようなお話をされていたのですか?」


「それは……」


見る見る間に顔を紅潮させ顔から汗を吹き出す頼政。


「令旨……」


「くっ」


「おっと、これは余計なお話でしたね。つい興がのってしまった。良いですか? 今夜の事はお忘れください。そうでないと、こちらも忘れることが出来なくなってしまいます。公卿がお忘れ願えればこちらも今夜の事もこの情報も無かった事にできます。よろしいですか?……


それでは、これにてお休みなさいませ」


そう言った黒ずくめは確かに目の前にいたはずなのだが……頼政は瞬きすらしていなかったはずだ。にもかかわらず忽然と姿を消していた。


「どうだった?」


「爺っちや。あいつが全部裏で糸引いとるわ。頼政にうちらの情報流しとる」


「何なんだ? わからん。殺すことが目的ではないはずなのだが……そうか、ならば、明日こちらから仕掛ける」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る