第162話 猛攻。
「あなた、きのうどこに泊まってたの」亮介が自宅の自室に戻るとそんな言葉で出迎えられた。もちろん家族には泊まることは伝えてあったし、京子の母親からも連絡が入っていた。
そう言えば別れる間際に『毎週土曜泊まれば』そんな提案が京子母からされた。京子父も賛同していた。京子と関係を進めた後なので『ドキリ』とはしたがそういうのもいいかもと思った。毎週とは言わず隔週くらいなら北町家の負担にもならないかもと、そう返事をした。なぜか雅が喜んだが雅はほぼ寝てただけだ。
自室にいたのは姉の陽茉でも、同居してる従姉弟のクミねぇでもなかった。そこに正座で三つ指ついてのお出迎えをしたのは咲乃だった『後藤事件』で背後からの見事な蹴りを見せつけ京子を骨折へと導いた功労者だった。その咲乃が何故亮介の自室に三つ指付いて『正妻』風で出迎えたのか、しかも『浮気相手』の家に泊まってきた感を出しているのかまったくの不明だった。
三つ指付いているので胸元がちらりと見えた。きのうの京子のことがあったせいか、亮介はついつい目で追ってしまう。しかも(結構大っきいなぁ)などと思ったりしながらだ。残念なことに亮介自身も認めていることなのだが、亮介にとって咲乃の見た目は『ドストライク』なのだ。
無造作なレイヤーボブ。タレ目につり眉。何より咲乃の話す声が何故か亮介にとって耳障りのいいものだった。付け加えるならこのふたりは『キス寸前』まで行った仲なのだ。
その咲乃が胸チラッな上に白いうなじを見せている。要素を盛るなら今だれも家にはいない。亮介を置いて映画アンドショッピングに出掛けているのだ。当然高校男子なら生ツバ必須の場面だが、今までもこういう場面咲乃と何度かあった。
あったけど何もなかったのは咲乃の性癖というか、属性が原因だった。咲乃なにはともあれ亮介を『監禁』したかった。自由を奪ってじわじわと責めたい、そんなガチな性癖を持っていた。見た目は好みなのだが中身が『とんがり過ぎ』ていた。
咲乃はその事が原因で亮介との仲が友達に以上にならないと珍しく反省していた。咲乃は『監禁属性』を除けば中々に尽くす女子だった。いや『監禁属性』ですら亮介のお世話がしたいという歪んではいるが、愛情表現と言えなくもない。いや、言えないか。
亮介が京子との仲を終わらせて望と付き合っている間、いつも傍らで登校していた。それでも別の高校なのでどうしても接点が薄いと見るや転校という荒業を仕掛けてきた。そんなこともあり高校生活では亮介の隣にいつもいるのは咲乃だったのだ。
後藤が亮介と京子の仲が冷めきっていると誤解したのは咲乃の存在もあったから。その咲乃が三つ指で背中に『ゴゴゴゴゴッ』的な文字を背負い正座していた。
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