第158話 処理した。
いつもの自分ならどうしていただろう。京子は思った。亮介との関係を発展させたいと思いながらも、肝心なところでおどけてみたりしていなかっただろうか?
そして空気を読んで亮介が遠慮して後戻り。それを何度か繰り返した。亮介はそのことに一度も苦情は言わない。言わないけど…『今回も同じだろう』そんな半ばあきらめの感情を持たせていないかと京子は考えた。
もしかして。京子は男子の機微を理解している訳じゃない。訳じゃないけどもし相手が亮介ではなく、亮介のような寛容さを持ってない男子なら一度でも『後戻り』したら別れに繋がっているかも知れない。
焦りからではない。もちろん『悪いなぁ』そんな罪悪感からでもない。でも手を前に突き出して亮介を止めるより、その手は背中を押すことが出来たら、亮介の好意に寄り添って背中を押せたら。
何かが変わる。いや、何もかもが変わるかも知れない。変わりはじめの出発点でオロオロとしている自分に手を振る時期と、その手を取る相手を見つけたのだから。
亮介にそっと寝かされた京子。亮介は京子の反応を、準備を……心の準備を待つかのようにじっと京子を見ていた。
『そろそろ寝ない』そう京子が言えば文句も言わず隣で寝てくれるだろう男子を好きになった自分がどこか誇らしい。
「リョウ。来て……続きして」想像していた言葉ではない。亮介は今まで抑えていた感情、京子に対しての持っていた願望のブレーキを緩めた。
「キョウ、いいの」
「いい。今まで逃げてごめん」京子は内面にあるわだかまり、そんなことを言葉にするようにしていた。今も素直に自分が逃げていたことと、それを許してくれたことを感謝した。
亮介は京子の下着に手をかけた。この部屋に来てすぐに、着替えを手伝う時にふざけてしたパンツに手をかけた時はどうもなかったのに亮介は自分の指先の震えを感じた。京子にもそれが伝わっていた。
そんな指先の震えが亮介の純粋さを語るには十分だった。京子は亮介が脱がせやすいように軽く腰を浮かせた。ここまで女子がしてくれている緊張している場合じゃない。亮介は京子の下着を素早く脱がせた。
部屋の灯りは消えてない。2つあるうちの1つは消えているものの、程よい明るさを保っていた。京子の体がどうなっているのか、それを見た亮介がどんな顔しているのか互いにわかった。
亮介は女子の裸を生で見るのは初めてで、京子も男子に自分の裸を見せるのは初めてだった。じっと見る亮介の視線を手で遮りはしない。ただ女子として言い訳を1つした。
「あのね、もしこうなるのがわかってたらもっと念入りに処理したよ」照れ笑いをした京子だが、亮介の目にはこれ以上ないくらいきれいに京子の裸をが映っていた。
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