第151話 栄誉ある撤退。
「これはなに?」亮介は京子の部屋で目を疑う『設定』を目にする。京子のベッドに枕が仲良くふたつ並んでいる。時間はそろそろ深夜だ。
「あ―」京子はボリボリと頭を掻いた。お母さんの仕業だった。酔うと悪ふざけをするのだが、やり過ぎじゃね? 京子は出そうなため息をガマンする。
京子の両親はお酒を飲むと朝まで起きない。それし雅は遅くまで起きれない。しかも、一度寝るとこれまた起きない。探偵物でいう『密室』が北町家で成立していた。
「これはね、大人の悪ふざけなの」京子は自分に言い聞かせる様に言いながら枕をジト目で見た。
「リョウ、どうする『渡りに船』にする? それとも栄誉ある撤退でリビングのソファで寝る。寒いけど」
そう言って見たものの―(そんなこと言われたら退路を塞がれたみたいだよね)京子は固唾を飲む。すると意外にも亮介は特に躊躇することもなくベッドの奥にある枕の方に行った。
「こっちの方がいいだろ、ギズス的に」京子の左腕を見ながら言った。
「あ、うん。そうか―そうだよね」京子は少し不満だ。少しはドキドキしてくれてもいいのに。そんなことを考えた。今までならそれを言葉にしてこなかった、それがイケない。京子頑張って言葉にする。
「なんでなの」京子も同じように躊躇せずにベッドに入る。シングルベッドだ。ふたりだと狭い。狭いと言うことは密着待ったなしだ。
「ん? もう少し話したいし。側にもいたい」これまた、意外にも亮介は直球で返した。
「リョウさ、知ってた?」
「何を」
「私―ズボン履いてたら寝れないの」もちろんそんなこと亮介が知るはずもなく僅かに生唾を飲んだ。
「いいの? 脱ぐよ」
「電気は?」
「消さなくていい。消すと変にエロいし―後ろ向いてて」
「わかった」京子はいいつけ通り亮介が後ろを向いているものと思いパジャマのズボンを脱ぐも、亮介は普通に見ていた。
「リョウ後ろ向いててって言わなかったかな?」
「後ろ見ててって言われた。言われた通り後ろ、お尻見てたけど」
「後ろ向いててって言ったけど? 誰が後ろ見ててなんて言うかな」
腰に手を当てて呆れるも、京子はパンツ姿を隠す気もない。
「隠さないな」
「隠さないけど何で見たの?」
「いや、何となく―黒かなと」
「どうだった」
「黒でした」
「何この会話」そう言って京子は笑う。笑いながら普通に亮介の布団の隣に入った。シングルベッドなので当然京子のふとももは亮介の足に密着する。
「どうするの、これから。さっきの続きとかするのかなぁ」京子は涼しい顔でニンマリした。試すように、伺うように。
「さぁ、どうしょうな」亮介は曖昧な返事をして京子の髪に触れた。
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