第139話 そろそろ。

 5時間目―あたり前のように眠たくなる女子がひとり――


 1年生の教室にいた。


 その1年生女子はめざとく意中の人物を『キャッチ』おかげで閉じかけていたまぶたを開く事ができた。


 1年生女子の名前―『北町きたまちみやび』スポーツ万能女子にして――


 亮介の弟子を自称していた。


 正確には『弟子』ではなく、『教え子』なのだ。壊滅的な成績な上に油断すると『遊んで』しまう―


『ノーテンキ女子』雅を『修行』と称して『無限暗記』を敢行かんこう――


『修行』の名に弱い雅はまんまと、わずか数ヶ月で受験に必要な英単語、方程式、年表、漢字などなどを最低限をマスターした。


 成績もストップ高で――学年中盤に躍り出た。後ろから『一桁』にいた雅にとってはまさにストップ高と言える。


 そして高校合格の快挙に導いた『師』である亮介を心から敬愛し、信じ切っていた。


 そして――『亮にぃ』も私のことを―妹系ナンバーワンと思っていると自負していた。


 これはあながち間違えてはいない。


 ――というのも亮介の周辺に『年下女子』がいないのだ。


 そんな訳で『妹系最強』の名は間違いないのだが――


 だがそれだけではない――意外なことに亮介も雅を無条件で信頼しているフシがあった。


 亮介にとって実のところ――雅は『お気に』なのだ。


 おバカな面はあるが、裏表がなく感情表現が単純でわかりやすい。感情がストレートなのも好みだ。


『裏表』についての亮介の考えなのだが――


 亮介は現実主義で人は『裏表』があって当たり前と思っていた。


 なので――別に腹黒でも構わなかった―好きになるかは別問題として。


 なので仲良くなってすぐに『ダーク』な部分を見せる者に対してはその『ダーク』な面も含めて――


 受け入れて接するところがあった――


 その代表なのが――


 咲乃だった。一緒のバイトをはじめてすぐに咲乃『色々』とばら撒いた―


 内面を―『ダーク』な自分をさらした。


 なので早い段階で『咲乃』ってこんなヤツ――と思えて信用した。


 腹黒だろうと、それも個性。


 そしてその対極にあるのが―


 望と詩音だった。


 望の話は別の時に触れるとして――詩音の本音は亮介にとって特に『意味不』なのだ。


 幼馴染である事実を言わない――詩音はそんなスタートを切った。


 そしてよくわからないままに――全校生徒公認で『振られる』ことになるが――


 実は『死の天使』こと咲乃のことを炙り出すためで…


 ―となると、亮介にはまるで意味がわからない。


 どうして『秘密』にする必要があるのか――


 理解出来ないし、まだ何か隠し玉を持っているのかも、と思えば――


 友達以上にはなれない。


 そんな訳で―亮介の信用ランキングは――


 雅―咲乃―京子―望―詩音の順だ。


 雅と咲乃の間はそれほどなく、咲乃と京子の間にあった『距離』を京子は詰めてきていた。


 そして京子と望の間は――それなりに開いていた。ここは開く一方かも知れない。


 望と何かあったかはまた別の話で。あくまでも亮介が『心を許す』―


 信頼しているランキングであり――イコール恋愛ではない。


 その信頼しているランキング1位の雅には予感があった。


『近々亮にぃと会う』





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る