第131話 先の先。
「うん、そういうのは『しばり』みたいで楽しいかもな。出してやってるのに、とか。出して貰ってるから―とかちょっと不健康だよね」
望さんはふむふむと腕組しながら頷く。そうは言ってもどうしてもまったく依存しないで済むか、といえばそうではない。そのことも言わないと。
「そう言ってもやっぱり無理なこともあります、お金的に」
「例えば?」
「食材とかです、その外で食べなくてもお金は掛かるじゃないてますか」
「それくらいは私が見ちゃダメなの?」
「いえ、そのお願いをしょうかと―」
「いいよ、お姉さんに任せなさい!」
望さんはベタに胸を叩いた。心なしか『ぼよん』と揺れた。あの高校男子なんですよ、油断も隙もないないんで、迂闊なことしないように、お願いしますよ。
そう、ちゃっかり見てるもんなんですから。
「それはそうなんだけど、体で返したいというか―」
「亮介わざと言ってるだろ?」
あっ、ジト目!大人女子ってジト目出来るんだ!なんかすごい。しかも思いのほかかわいい。
「つまり。労働で返したい―ってところか?」
「お察しの通りです。料理とか後片付け、掃除に洗濯」
「洗濯って、洗濯?」
「洗濯は洗濯ですよ、なにか?」
望さんは心なしか、あたふたしている。何にアタフタしてるのかよくわからない。
「ほら、下着とかさぁ」
「でも、洗濯機ですよ。手洗いじゃなくて。何なら下着『ネット』に入れておいてくれたら。それ以外干しますよ」
「意外に―下着平気なの、その男子高校生は?」
「あ―慣れてるっていうか、家では普通に姉といとこの干さないとなんで」
洗濯の量が多くて家族全員のは1度には無理。なので、家では『大人』と『子供』用に洗濯カゴが分けられている。
子供用の洗濯はオレの仕事なんだけど、
―とはいうものの、別にわざわざ手に取って眺めたりとかするわけでもない。当たり前か。
「下着問題はお任せしますよ、でも別々に洗うのは非効率でしょ?洗っときますから干してください。あと、洗って干す―取り込むまでは出来ますけど、畳めません。不器用なんで」
「あの、亮介ホンキで言ってるのか?それお手伝いさん級だけど?」
「なので、食費はご勘弁してほしいかなぁ。就職するまで。あと風呂掃除とかトイレも出来ますけど、嫌ならしません」
「嫌とかじゃなくて、そんなにお世話されると―ダメ人間になりそうだ、そうだ。これ―」
テッテってと望さんは姿を消してそして颯爽と現れた。
「持ってて」
差し出されたのはカードキー。マンションの。オレは望さんのマンションの合鍵を持つ関係になった。
いや、何にも変わんないけど。オレと望さんはこんな感じの大筋の約束を決めてお付き合いを始めた。
何らかの進展があるとしても、それは卒業後の話。まだ、入学して間のないオレにとっては先の先。
―のはず。たぶん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます