第103話 キホンでしょ。

 オレは我慢をやめた。思っていたとを口にした。


 京子はオレの『カキコム』を見ていない。


 正確に言うと『見てはいる』それはPVや評価。所謂いわゆる数値の画面。


 多かった、少なかった、そんな表面のこと。京子との会話はいつもそんな感じ。


『今日多かったね、評価増えてるよね』


 最初はそれでもよかった。


 そんなことを言ってくれる人ははじめてだった。単純にうれしかった。だけど、ある時から―


『読んでないよなぁ』


 そのことを感じてから、前よりも寂しさが増した。


 オレは京子の書いたものは読んでいて、誤字脱字を見つけたらすぐに連絡するようにしていた。


 すると、いつの頃からか『誤字脱字』はチェックしてくれるので、あまり確認しないままアップするようになっていて―


『読んで貰って当たり前、チェックされて当然―』


 そんな感じになってしまった。


 そんな感じだから、オレは京子の読者から書き込まれた『カキコム』のコメントを読んでいた。


 酷い書き込みなんかあった時は、落ち込まないように先回りしてフォローしていた。


 それでも自分のこと、自分の小説書いたり、バイトで疲れてたりで見なかった日などに、別の読者さんから誤字脱字指摘されること、あったりすると、


『見てくれてないんだ』


 そんな風に『チクリ』刺してくる。


 それでも、誤字脱字って自分持ち。


 確認してるようで出来てないことってあって、指摘して貰うことだってある。


 オレだっていまだにあるんだ。それでも。好きなんだから、やり続ける。書くことも、誤字脱字の確認も。


 話がれてしまった。戻そう。


 つまりは、オレは誤字脱字を確認する、確認出来るくらい何度も京子の作品に目を通しているが、京子はオレの変化―


死天してん』との和解、そして共闘。こんな大きなニュースまで気づいていなかった。


 たぶん、部活の先輩に言われてはじめて気付いた。


 そして共有されてないことに腹を立てて飛んできた。そんな感じだ。


 オレは今まで言わなかった事を、いま口にした。ふたりの前で。


 比べたらダメなのかなぁ、それでも詩音は毎回オレの最新話を読んて寝る、すぐには無理にしてもコメントをくれた。


 このコメントは書き手にとってどれくらい、力になるか京子は知ってるはずだ。


 京子はオレの話をひと通り聞いて口を開く。


「それは、ほら私も忙しかったりで―」


「亮介や私は暇なんだね」


 京子の言い訳を見逃す詩音ない。感情的にはオレよりも怒っている。


 怒っているけど『京子だから』とお目溢めこぼししてきた部分はある。


 あるにはあるが『私も忙しかったり―』という言い訳を受け入れるほど、京子に依存してない。



「それでも、亮介優しいから肝心なこと言わないけど、あんたグチッター私たちにフォローされても、フォロー返してないよね?」


「それ友達なのかな、仲間なのかな。昨日のことを、私も亮介に詳しく聞いたわけじゃない―」


「―だけど朝亮介のグチッターとかカキコムのコメント欄読んだら理解出来たよ、なんでしないの?」


 そして呟いた。


『そんなの仲間のキホンでしょ』





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る