第77話 駄目なところ。
どんがらがっしゃん
店内に鳴り響く効果音。いや、効果音じゃないか。
まぁ、ド派手な演出にはぴったりなのは間違いない。
「今日いったい何度目だ?」
こめかみを抑えながらナッシュビル店長、綾野望は小さくわめく。割れるような食器は少なめだが音は派手だ。
原因は言わずとしれた『
佐々木が轟音をたてるたびに、
「失礼しました」
そう、望店長はお客様一同に詫びをいれるのだが、詫びを入れ過ぎて謝り方が『お笑い芸人』の『はけ方』になりつつある『ども!失礼しました!』的だ。
「
「そんなこと知るくらい仲良くないですよ、佐々木と」
振っておきながら『それもそうか』とほぼ自己完結。
もう少し掘り下げてもいいような気もするが、まぁオレからは何も出ない。
「ヘルプくらい行きましょうか」
「助かる」
何だこの『戦友感』は視線すら合わせない、合わせないけどわかり会える関係…んなわけないか。
オレは望ちゃんの凛とした立ち姿を視線に捕らえながら効果音溢れる厨房へと。
「佐々木」
「おわっ、と!何びっくりした亮ちゃん、どうした?」
「なにやってんだよ、解体でもしてんのか」
「あっ、ごめん。なんか、ごめんね。手につかなくて―」
言った端からおぼんが宙を舞う。何だなんだ、この取って付けたテンプレ感は。
―にしてもわざとじゃなさそうだな。額は汗だくになってる。汗だくになる季節じゃないし、何より室温管理される。
あぁ、聞きたくない。聞きたくないないけど、オレに心配させるため、気を引くためにやってるとも思えない。
手を差し伸べたと知ったら怒るか、あのふたり。まぁいいや、どの道近々怒られる予感しかない。
何よりだ佐々木が素直にオレの手助けを必要とはしないだろ。
「洗い物手伝うよ」
「そ、そう?ありがと。なんか食器落とさない気がしないよ、」
あれ、素直に受け入れた。本格的に調子悪いのか?
備品を補充しょうとする端から『ばっさー』とひっくり返して社員さんに助けてもらってる。
ふとホールを見ると望ちゃんが肩を
「散々だったな」
「うん、なんとかリングサイドに逃げた気分」
例えがシュールだよ、わかんないよプロレスとか、わかってるか。
何とか定時に逃れたそんな気分なんだろう。不本意だがファミレス・ナッシュビル前の自販機横で佐々木咲乃を慰めることにした。嫌だけど、同僚は同僚だ。
同僚の不調はちょっと可愛そうだ、これが演技なのかも知れないけど。放ったらかして帰るのは気が引けた。
こういうところがオレの駄目なとこなんだ。
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