第39話 時系列。
「咲乃って呼んでくれたら教えてあげるよ?」
な、なんなんだ。この半乾きの髪を乾かす仕草、タオルと前髪の間から覗くくるりとした猫目、しかも上目遣い。
明らかに生唾ごっくん案件、いや事象、いやそうなことどうでもいい。何が言いたいかって?
『乾きかけのレイヤーボブ』はヤバいってことだ。
うん、困った。
堂々巡りとはこういうことか。さっさと『咲乃』と呼べばいいものの、さっきまで一緒にいた京子とのことを思い出してしまう。
思い出してしまうものの、湯上がり佐々木肌、いや、なんだよそれ!そんなフレーズいらないよ。
あっ、でもネタに使えそうだなぁ。付箋、付箋と。
だぁ、違うよ。佐々木に何となくドキドキしてる自分、何か京子に申し訳ない。
申し訳ないないけど、男子高校生こんなもんだからね。
仕方ない。情報を聞き出すために呼び捨てにするしかない。
そもそも佐々木が何系の情報持ってるかも定かじゃない。焦らすほどのネタあったか?
「さ、咲乃教えるってなに?」
「おっと、理解が早くて助かるよ。早速の呼び捨て。てへっ。情報ね?えっとね、ビデオトーク中なんだけど『誰かから掛かってきたら』通知でるから大丈夫だよ?」
「それはつまり?」
「カノジョにバレないよ」
あっ…浮気工作の情報共有だった。
気が利くなあと、ありがたがるべきか?そんな情報引き出すためにオレ呼び捨てにしたんだ。
何か大人の階段登った気分だよ、登ってないけども。
「なんか、着ろよ。風邪ひく」
「あれ?あれあれあれ?もしかして露出ちょいマシマシ気味な咲乃ちゃんに緊張してるとか?」
「別にそんな、まぁ。そんなんだけどさ。風邪引くとマズイだろ、中間テスト目前」
「あら、やっぱり素直ね。びっくり、そこ『そんなんじゃねーよ』が男子高校生の鉄板よね」
「確かにそうなんだけど『そんなんじゃないならもう1枚脱いじゃおかな』になるとヤバいし」
「きゃわ、それないよ。だってこれ脱いだら、ねぇ?」
「ねぇ、ってまさか…」
「ポロりよ、そこご注文頂いても無理よ」
「そりゃ、まぁ。京順のカノジョだし」
なんだ、この間は。画面では乾きたての前髪の間から眉間を押さえる佐々木の姿。なんか変なこと言ったか?
「やっぱりムリだわ」
そらそうだ。カレシの親友とこんなに親密になるのは無理に決まってる。
まぁ、オレがあえて言う前に気づいてくれただけありがと、だが。
「いや、ね。何がムリかって言うといくら設定でもあの『
「はいはい、話見えないよね亮ちゃん。ごめん、薬師寺とはカレシでもカノジョでもありません。それを時系列に沿って説明しょう!」
なんだろ、このテンション。
きっと今日テスト勉強ムリな感じなんだろな。
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