第6話 ハムカツセットと和風御膳。

冬坂とうさかくんたら、ねぇ」


 オレは呼びかけられる声に振り向く。


 登校中の電車の吊り輪を握りながらスマホで『カキコム』の反応を確かめている。


「えっと…北町?」


 ちょっとびっくりした。


 きのうの夜脳裏に刻み込まれたギンガムチェックのタオル巻き巻き女子とは程遠い『地味さ』何かあった。


「失礼だなぁ、駅隣なんだから気付いてよ、もう」


 そう言いながらオレと同じで『カキコム』のマイページ。PVを確認する。


 もちろん家出る前にもしてるだろうけど。


「きのう話してた『文字数』のこと。あぁ…増えたのひとりか。うれしいけど…」


 北町は残念なつぶやきを漏らす。


「文字数?」


「そうだよ、文字数。あれから考えたんだけど今日で84話なんだけど―いきなり全部2500文字にした方がいいかなぁ」


「それはいくらなんでも混乱するよ、読み手さん。だって単純に168話になるわけだからね」


「そうなんだよ。今日84話読んでくれた『奇特な人』にわるいなぁと。」


「そうだな。そこ大事にしたいよな」


「だよだよね?」


「ひとまず…行間開けてみる?」


「行間を開ける?」


 北町の聞き返す言葉と同時に学校最寄り駅に到着した。


「きのう夜ちょっと見たんだけど北町の。なんとなく行間『きつきつ』かなぁって、電車とかで読みにくいかなぁ、そんな気したよ」


「冬坂くん、見てくれたんだ」


 はにかむ姿がきのうのビデオトークを思い出す。


 赤と白のギンガムチェックのパジャマ。たまりません。


 それでもオレ以外には地味系女子に見えるんだろうな。


 なんてリアル迷彩仕様は。これを小説に出来そうだ。


『オレのカノジョ存在が迷彩過ぎて見当たらないのだが、どこ?』


 いい感じだ。


「ひとまず第1話に手を加えてみてSNSで宣伝する、みたいな?」


「あーっやったことないんだなぁ、。そうだよなぁ。必要かなぁ、やっぱり。冬坂くんは?」


「やってる。じゃないと見つけてもらえないよ、流石に何万とある中から選んで貰わないと、だから」


「そっか―」


 なんだろ、しゅんとしてる。気おくれしてるのかな。


 グチッター。


 宣伝だとかコミニケーションを取るのにちょうどいいアプリだけど、最初は敷居が高い。知らない人との会話。


「北町―」


「んー?」


「手伝うよ、グチッター。宣伝の仕方とか」


「え―っいいの?わるいなぁ」


 北町との会話はなんだろ、間延びしていて安心する、


 そしてその勢いで寝てしまいそうだ。


「これ、どんな関係よ?」


 悪友、薬師寺やくしじ京順けいじゅんが奇妙なものを見た目で指さす。


 確かにオレと北町、クラスメイトという繋がり以外皆無だ。


 いや、クラスメイトってことも実は知らなかった。


「え―っと誰だっけかなぁ」


 北町は同じクラスの京順のことは知らないらしい。おかしいなぁ明らかにオレより目立つはずだが。


「薬師寺、亮介のツレ。なんで亮介と北町?ハムカツセットと和風御膳なんだが?」


 例えがわけわからんけど、なんか伝わるのは変だなぁ。


 そしてなぜかオレが『ハムカツセット』だともわかった。


 オレは北町と向き合う北町は北町で『どんな関係?』な顔してる見つめ合う。その姿を京順は。


「うそっ、付き合ってんの?マジ?」


 そんなこと言われてるにも関わらずわ地味系女子北町京子はアゴに手を当てて『どんな関係だろ?』と考えていた。













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