エピローグ

65.兎にも角にもオヤツにバナナや。

 こんにちは。ソロリです。今日もいい天気です。朝はスズメが鳴いていました。清々しい、最高の朝でした。

 わたしは、お布団から飛び起きて、しっかり朝ごはん食べて、デザートもしっかり食べて、出かける前にも昼ごはんもしっかり食べて、デザートもしっかり食べてきました。今日も絶好調や思います。


 ここ一週間、食後のデザートに、バナナを食べまくりました。おかげで腸活ちょうかつもバッチリです。今なら、水着の写真撮影にも、自信満々で挑めます。


 私は、今、バナナを食べながら、大阪城のお堀の前にいます。ちょうどオヤツどきにバナナを食べながら、大阪城のお堀の前に立っています。


 バナナをしきつめた橋の上を全力で走って、すべったら、もといた時代に戻れるらしいです。橋の長さは20メートルくらい? 橋の幅は、わたしの肩幅くらいです。高さは、5メートルくらいかな? 大阪城のお堀の上に特別に作られた橋でした。


 大阪城の広場は今、バナナの橋の最終調整で大忙しです。

 三成みつなりさんの同僚さんが、一所懸命、バナナを食べて、バナナの皮を橋の上に敷き詰めています。わたしの食べたバナナの皮も三成みつなりさんの同僚さんが素早く受け取って、橋の上に置いてくれました。


 見物人は、策伝さくでん和尚と、おくにさん、そして山三郎やまさぶろうさんとそのバンドメンバーの皆さんです。


 関白かんぱくはんと、権兵衛ごんべえさんの、わたしのふととも大好きコンビは、いくさの準備で忙しいらしいです。今日のイベント観覧は、泣く泣く諦めたらしいです。


 三成みつなりさんも、大忙しで来れなかったらしいです。なんでも、地べたを這いつくばって、泥にまみれて秋には稲を収穫するらしいです。策伝さくでんさんにそう言われたらしいです。お侍さんから、農家さんに転職したんやろか?


 でも、三成みつなりさんは、今日の朝早く、わたしの居候先のお寺にきてくれました。お土産を持ってきてくれました。餞別せんべつや言うて、懐から大量の白いハンカチを、「わっさぁ」言わしてわたしの目の前に置いて、ニヤニヤしながら言いました。


「これで、干支かんし七度廻る未来でも、存分にすべり倒すであろう」


 なんや、めっちゃイジワルなところが、小早川こばやかわさんに似てきたと思います。三成みつなりさんは、めっちゃイジワルで、めっちゃ優しいです。

 わたしのポケットは今、めっちゃイジワルで、めっちゃ優しい三成みつなりさんの心もこもった餞別せんべつで、パンパンになっています。



「そろそろ準備が出来ましたな」


 立派なマネージャーの策伝さくでんさんが言いました。


 わたしは、お堀の前のバナナが敷きしきつつめられた橋の前に立つと、策伝さくでんさんにお願いしました。


「じゃあ、走る前に猪突猛進ちょとつもうしんって合図してください」


 わたしのお願いを聞くと、立派なマネージャーの策伝さくでんさんは珍しく慌てふためいていました。


「しもた! 掛け声考えてない!!」


 策伝さくでんさん腕を組んで考え始めました。


「今年はうさぎ年や。猪突猛進ちょとつもうしんは筋が合わん。何かええことわざないでっしゃろか?」


 わたしは、ゆっくり考えて、ソロリと答えました。


「うーん・・・脱兎だっとごとく?」


 わたしは、トリニクのこと教えてくれた、クイズ番組で覚えた知識を披露しました。


「ええですな! それでいきましょ!!」


 そう言うと、策伝さくでんさんは立ち位置につきました。


「ええです? 脱兎だっとごとく、脱兎だっとごとくやで!」


 策伝さくでんさんは、年末特番の、大御所で、キレイ好きで、女の人の好みがうるさいから結婚できない芸人さんみたいに言いました。


干支かんし七度廻る未来でもどうかお元気でー!」


 ミュージシャン席から、山三郎やまさぶろうさんが叫びました。

 わたしは、手を振りながら言いました。


山三郎やまさぶろうさんもどうかお元気でー! おくにさんもどうかお元気でー!」


 わたしが手をふりながらそう言うと、おくにさんは、ニコニコしながら手を振りました。


「しゃべらんのかい! おくにさんは、結局最後まで一言もしゃべらんのかい!!」


 わたしがおくにさんに突っ込むと、大阪城のお堀は、笑いに包まれました。めっちゃあったかくて、優しい笑いに包まれました。


「そろそろ行きましょ! もうさるこくが来る! おやつが過ぎてまう!!」


 立派なマネージャーの策伝さくでんさんが、大声を上げました。突然、大阪城お堀が静かになります。同時に、なんや豪勢な音楽を山三郎やまさぶろうさんたちが演奏しはじめました。


 ・・・あかん、緊張してきた。


だっ・の・ごと・く!!」


 音楽が終わると、ものスッゴイ大きな声を、策伝さくでんさんが張り上げました。わたしは、その声につられて、思いっきり、全速力で橋の上を走ってしまいました。


 わたしは、満足してました。声につられて、全速力で走って、この時代にこられたのめっちゃ満足してました。

 策伝さくでんさんや、ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはん、ながおもんない三成みつなりさんに、カカシの山名やまなさん、おくにさんに山三郎やまさぶろうさんとバンドメンバーのみなさん、リアルガチでアタマがあれな権兵衛ごんべえさん・・・そして、めっちゃイジワルやけどめっちゃ優しい仁将じんしょう小早川こばやかわさん。

 

 ソロリじゃなくなるわたしは、めっちゃ満足しながら、バナナの皮で思いっきりすべりました。

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