第112話転移先
「ここは…、どこ? ギルドではないよ…ね…、そう考えても野外だし、見た限り岩肌が剝き出しの荒野?」
酔った勢いでドリューンさん転移魔法陣に魔力を流し込んだ瞬間、魔法陣を中心に大体5~6メートルぐらいの範囲が光に包まれ、直後見知らぬ場所に飛ばされた。
テーブルも椅子も、並べられた料理も一緒に…。
唯一の救いは周囲に自分達以外の人が居なかった事、近くにウエートレスさんとか居たら巻き込まれてたかもしれないし…。
まあ冒険者が巻き込まれる分にはまだいいけど、ほぼ一般人が巻き込んでたら申し訳ないもんね。
「何処だここぁ~!!! 草木一本生えてない岩山じゃないかぁ~!!!」
「ドリューン、あなたねぇ~!!! なんで魔力を通すの!! バカなの!!」
転移魔法陣が書かれた紙に酔った勢いで魔力を流し込んだドリューンさんにカトレアが怒ってる…。
「まあ気にすんな! 転移先が海のど真ん中だったり火山の火口だったりなんて話は今まで一度も聞いた事がない、という事は転移先は陸地のはずだ、それに転移先は隠された古代の財宝が眠る場所って事もあるしな」
そう言いながら豪快に笑っているけど、カトレアはそういう事を言っているんじゃないと言う感じの表情だ。
ルイーズさんとリーズは警戒しつつカトレアとドリューンさんのやり取りを聞いている。
「あのドリューンさん、1ついいですか? 転移先が海のど真ん中だったり、火山の火口だったりした場合って普通に死にますよね? そんな話は聞いた事が無いって、そもそもそんな所に転移したら生きて帰って来ないでしょうから話を聞く事なんて出来ないんじゃないですか?」
初歩的なツッコミにドリューンさんが一瞬考え込み、その後豪快に笑いだした。
笑いながら「確かにそうだ!!!」 とか言っているけど、本当に海のど真ん中や火山の火口だったらどうするつもりだったのか…。
いやどうする事も出来ないか。
海のど真ん中だったら運よく近くに陸地があれば良いけど無ければ、暫くは海を漂っていずれは溺死するだろうし、火山の火口だったらそのままマグマに呑まれて即死亡だし。
そう考えたら何処か分からない場所だけど陸地だっただけでもラッキーだったと言える。
「はぁ~、もう転移してしまったからには、ドリューンに何を言っても意味無いし、今はここが何処なのか、近くに村や町が無いか探すことが先決ね」
カトレアは盛大にため息をつき、これからどうするのかを考えている。
カトレアがここまで考え込むのなんて珍しい、と言うか初めて見た気がするけど、考えが纏まったら即行動に移しそうだからとりあえず今のうちに巻き込まれて一緒に転移して来た酒場のテーブルと椅子をアイテムボックスに収納し、あとはお皿とかも水魔法で洗ってこれも収納しておいてパダーリンのギルドに戻ったらきちんと返して飲食代も払わないと…。
ルイーズさんとドリューンさんが皿の上の料理を平らげたそばから水魔法で食器を洗い、アイテムボックスに収納する。
「酒は無いのか~?」
いや、あなたのせいでギルドの酒場からこんな所に転移したのに酒は無いのかって、いや、ドリューンさんにそれを言っても無駄か…。
皿を洗い終え、テーブルと椅子をアイテムボックスに収納し終わった頃にはカトレアの考えも纏まったのか、丁度よい大きさの石に座ってる。
「カツヒコ、終わった? だったら移動するわよ」
「移動するって言ってもどっちに? 見た限り周囲は岩山に囲まれてる感じだけど…」
「そうね、とりあえず日が沈んだ方へ向かうわ、この状況じゃどっちに向かうかなんてわからないから」
そう言い、カトレアは日が沈む方へ歩き出す。
日が沈むのは南だったと思うんだけど、地球だったら西だけどこの世界では南に沈むんだよね。
ただ生まれ故郷のルミナ村は6国の中で南に位置する感じだったからか、なんだか南より北方面に向かった方が良いような気がする。
まあカトレアの方が断然有事の際、対応能力があるからカトレア任せるしかないんだけど…。
その後、しばらく歩き、完全に日が沈んだので野営をし夜を明かす。
酔が醒めたドリューンさんは相変わらず悪びれも無く盛大に笑いながら話してるけど、少しは反省して欲しいと切実に思う。
昔の人間は皆こんなんだったのかな?
それにしても驚いた事にカトレアもドリューンさんも天測は苦手らしく満天の星空が広がっているけど現在地とかは分からないらしい。
昔の冒険者ってレベルが段違いに違うから余裕で出来ると思ってたけど、得手不得手はあるみたいで2人とも不得手、もうこれって遭難で良い気がする。
村に居た時、星で現在地が分かるように勉強してれば良かった…。
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6月は更新出来ず申し訳ございませんでした。
本日より更新させて頂きます。
7月もリアルで瀕死の為、不定期になります。
申し訳ございません。
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