第79話教会からの依頼

自分を名指しした指名依頼を断りギルドを後にし、常時依頼である狩りと採取、カトレア相手の訓練を終え夕方、獲物をギルドに売りに行くと、再度ジャンダーク教会から指名依頼が来ていると受付のうさ耳お姉さんに教えられた。


断ったその日に再度指名依頼ってどういう神経をしているのかと思う。

なにより指名依頼の内容は変わらず、唯一変わった所は報酬が竜残血花1株につき金貨10枚に増えているだけで明らかに報酬が少ないから断られたと思っている気がする。


今回も即答でお断りをすると、受付のうさ耳お姉さんは驚いたような顔をして、指名依頼を断る理由を教えて欲しいと言って来た。

どうやら今朝、断られた事をすでに教会に報告をしているようで、予想通り教会としては報酬の低さが断られた原因と考えているらしく、報酬を2倍にして再度依頼をしてきたようで、これでも断るならその理由を知りたいとギルドに言って来ているらしい。


うさ耳のお姉さんが少し申し訳なさそうな顔で断る理由を質問して来るも、流石に教会の依頼が怪しいからとも言えない為、一応もっともらしい理由として竜残血花の生えてる場所が見当もつかない為に20日と言う期間で依頼を達成する事が困難であると伝えておく。


受付のお姉さんは、すんなりと断る理由を教えてくれたことに安心し、断る理由に納得してくれたようで依頼書に拒否と書き込みどこかに持って行った。


これでもう教会から変な依頼は来ないだろう…。

宿に戻る途中「カトレアがこれで諦めるとは思えないんだけど…」って言ってたのは気になるけど流石に生えてる場所が分からないものを取って来いって言う無茶な依頼はもう来ないでしょ。


そして翌日、午前中狩りと採取をし、夕方ギルドへ換金に行くと、教会からまたしても依頼が来ていた。

いや、普通もう諦めるでしょ、受付のうさ耳お姉さんも思いっきり困った顔してるし…。


一応依頼書に目を通してくださいと差し出された依頼書を確認すると、今度は竜残血花が生えていると思われる場所が追記されていた。

報酬や依頼失敗時の条件など特に変更は無いものの、場所が分かっているなら何故最初から依頼書に記載をしなかったのかと更に教会へ対する不信感がつのってくる。


「今度は竜残血花が生えている可能性がある場所が記載されてるわね…。 それで? どうするの?」

後ろから依頼書を覗き込んでいたカトレアが教会からの依頼を自分がどうするのか興味深げに質問をして来る。


「いや、まあある場所が分かるんだったら行っても良いんだけど、そもそも今の時期に竜残血花って咲いてるの? って言うかこの竜残血花が生えていると思われる場所ってだけで本当に生えているかも不明だし、失敗時は自分が直接教会に報告するってのが明らかに怪しいし、わざと失敗させて失敗報告の為に教会に来させるのが目的のような気がするんだけど…」

「まあ、恐らく失敗報告に来させることが目的でしょうね。 だったら今回もそれを理由に拒否してみたらいいんじゃない?」


「まあそうなんだけどね、向こうがそれで諦めてくれるとは思えないし、かといって依頼を達成したらしたで更に面倒な依頼をして来そうだからどうやったら諦めてくれるのかを考えたいんだけど…」

「無理ね、向こうがここまでするほどカツヒコに目を付けている以上、それを否定して納得をさせない限り教会は纏わりついて来るわよ。 それに教会が目を付けて纏わりついていればいづれ、国にもその事が伝わるはずだから、そのうち教会と国から同様な依頼や、強引に理由を作ってでも調べようとして来るはずよ」


「じゃあカトレアは諦めて依頼を受けてみてダメなら失敗報告をしに行った方が良いと?」

「そうね、この王都で活動するならば成功、失敗に関わらず依頼を受けて相手の出方を伺った方が良いかもしれないわね。 それか活動拠点を他国に移すか…、とは言え教会のネットワークで恐らく行った先でも纏わりつかれると思うけどね…」


「だったら最初に指名依頼が来た時にそう言ってくれれば良かったのに…」

「あなたね~、毎回言ってるけど自分で考えて行動するように出来ないといざという時に困るのよ! 常に一緒に居るわけじゃ無いんだから自分一人で考えて何が自分にとって利になるか害になるかを判断できるようにならないでどうするの?」


「確かに…。 じゃあこの依頼は受けるって事でいいかな?」

「そうね、竜残血花の生えていると思われる場所を依頼書に記載して来たんだから受けるだけ受けて、そこに無かったら教えられた場所に無かったって言えば良いだけだから問題ないと思うわよ」


カトレアがそう言うので、一応ルイーズさんやリーズにも確認をすると依頼を受けることに問題は無いというかのよう頷くのを確認し依頼を受ける旨をうさ耳お姉さんに伝える。


「はぁ~、よかった…。 ありがとうございます。 お断りされる度に教会から理由は何故だとか依頼を見てどのような反応をしていたかとかしつこく聞かれて困っていたんです…」

教会からの質問攻めから解放されたからか安堵の表情を浮かべるうさ耳お姉さんに明日か明後日に出発する旨を伝えギルドを後にする。


うさ耳お姉さんは、出発直前か出発の前日に依頼書にサインをしに来てくれればそこから依頼開始となると言われたので出発前に依頼書にサインを書きに来る旨を伝えておいた。


それにしても竜残血花が生えていると思われる場所は王都から大森林に入って北東に進むこと6日程の所にある朽ちた遺跡群周辺との事だけど、本当にあるのか…。

一応、竜残血花の絵も受け取ったけど、真っ赤な花びらに黒と黄色の斑点と言う見るからに目立つ花だからあれば簡単に見つかりそうな気もするけど、多分、教えられた場所には生えていないんだろうな…。


無駄足と分かっている依頼を受けて教会に転生者じゃないって信じ込んで貰わないと今後も面倒事が付きまといそうだし。

とりあえず、朽ちた遺跡までの道すがら金になりそうな薬草や獲物を獲れるだけ獲って多少なりとお金が手に入るようにしよう…。

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