第74話Gランクの5人組
オーク3匹に追われ逃げて来た5人組は自分達の後ろに行くとまるで盾にするかのようなポジションを確保し、肩で息をしながら助けてくれと言っている。
恐らくこの前ギルドで絡んだ相手が自分とも気がついていないっぽい。
カトレアもルイーズさんも呆れた顔でチラリと後ろの5人組を見て、ため息をついている。
「あんたら、オークすら倒せないのに森の中で何やってるんだ。 実力も無いなら街中での依頼をしながらギルドの講習で実力を磨けってんだよ」
ルイーズさんがバトルアックスを肩に担ぎあげ、5人組を睨みつけながらそう言うと、オーク1匹ぐらいなら倒せるなどと震えながら言い出した。
「オーク1匹を5人がかりで倒せるってのは、倒したうちに入らないんだよ!! よく見ときな! オークを倒せるってのはこういう事を言うんだ!!」
バトルアックスを肩に担いだままオークに斬りかかろうとするルイーズさんを手で制し、自分が剣を抜いてオークに斬りかかる。
「おっ? カツヒコがやるってのか? まあオーク3匹程度ここに居る誰が相手にしても余裕だけどな…」
目の前まで迫って来ていたオーク3匹は、ルイーズさんがそう言い終わる頃には既に死体となって横たわっている。
普段から午前中探知でオークを見つけたら問答無用で狩っているし、動きも早くないうえ攻撃動作も大振りだからコツをつかむと簡単なんだよね。
それに毎日のように魔纏で身体を覆っているのにボコボコにされているのは伊達じゃ無いんだよ。
なんせ必死に魔纏の精度を上げて身を守らないと骨の1本や2本、普通に折られるし…。
剣に着いた血糊をぬぐい鞘に納めると、5人組を睨みつけているカトレアとルイーズさんの所に戻る。
「そういえば、この前ギルドで絡んで来た5人組だよね? こんな所で何をやってるの?」
5人組はその場に座り込み、自分達が助かった事に安堵の表情を浮かべてはいるものの2人に睨まれ縮こまっている。
「お、俺達は森に薬草やゴブリンを倒しに来たんだよ!! 森で薬草採取やゴブリンを倒した方が経験にもなるし、街での雑務なんかよりよっぽど為になるからに決まってるだろ!!」
「いや、そうやって無謀なことをして死なないように低ランク冒険者は街での雑務があるんでしょ。 それにギルドの講習で戦闘訓練もあるんだし、そこで技術と経験を積むのが先じゃない?」
「ふん!! お前みたいに運よく良いギフトを得た奴が良く言うセリフだな!! 俺達はそんな御大層なギフトを得て無いんだよ!! 何の苦労も無い奴が偉そうに!!!」
リーダーらしき奴がそう言うと、さっきまで睨まれて縮こまっていた5人組が思いっきり開き直った。
いや、ギフトは確かに良い物を貰っているんだと思うけど、それだけで今の自分がある訳じゃ無いんだけどな…。
そう思いつつ、5人組に自分のギフトと、生い立ちを簡単に説明する。
実際ギフト云々よりも、8歳から15歳で村を出るまで、ほぼ毎日走り込み、剣の素振り、魔法の練習をし夜は酒場で働いて村を出た後の資金を溜めていた事などを説明する。
ギフトを言うと不思議そうな顔をし、ギフトの事で15歳になったら村を出て行くように父親に言われたことを言うと、憐みの表情を浮かべ、8歳から15歳までほぼ毎日鍛錬をしていたことを言うと驚きの表情になる。
うん、5人とも表情豊かだ…。
「お、お前のギフト、器用貧乏って何なんだよ!! 器用なのに貧乏って、お前金持ってて貧乏じゃ無いだろ!!」
「う~ん、まあ貧乏では無いね、金はあるし…。 村の司祭も初めて聞くギフトって言ってたし、とは言え自分が今こうしているのは8歳から毎日鍛錬をしてたからだし、元から今みたいな力があった訳じゃないし」
5人組が黙り込んでしまった…。
いや自分の境遇は普通でないけど、それでもギルドで戦闘講習受けて、街での雑務依頼をして夜にでも鍛錬すれば良いだけじゃない?
実戦経験も大事だろうけど、基礎体力や技術の下地が無いとそのうち伸び悩みそうだし。
街への帰路、そう話をすると少しは思い当たる事があったのか以前絡んで来た時の態度と比べだいぶまともに話を聞き、質問などをして来た。
カトレアとルイーズさんは、今回5人組が逃げて来て自分達を盾にするような行為をした事がどれだけ他人に迷惑を与え危険にさらす事になると怒っては居たけど、5人組も必死だったとはいえモンスターをいきなり他者に押し付けるような行為だったことを反省した様子だ。
歩きながら色々と聞いたけど、5人組のリーダーの名はハイムと言って16歳、他は15歳でトムル、ザイル、ルッツ、リーバと言う名前らしく、リーバが魔法をメインに戦い、ルッツが弓を使い、残り3人は剣で戦うスタイルらしい。
バランス悪!!
しかも魔纏を使えないのは分かるけど、身体強化も使えない、剣は我流に近く斬ると言うより打撃を与えるか刺す程度の腕しかないらしい。
それでも今までは遭遇したゴブリンや単独で居るオークを囲んで倒したりしてたみたいだけど、今回みたいに複数のオークを相手にするのは初めてで、ゴブリンが複数現れた時は倒せたし、単独のオークも倒した事があるから自分達はGランクの中でも上位に居ると思い込んでいたようだった。
「なあ、お前、カツヒコって言ったよな、俺達に剣や魔法を教えてくれないか?」
ハイムがそう言い出すと残りの4人も同様に頭を下げる。
「あなた達、話にならないわよ!! カツヒコに教えて貰う以前にギルドで基礎をしっかり学びなさい!! カツヒコとあなた達の実力に開きがあり過ぎるし、基礎からなんて教えてる暇は私達には無いわ」
頭を下げる5人組にカトレアがそう告げると、実際目にした実力の違いを思いだしたのか、「基礎を学んで実力を付けたらいいんだな?」と言い雑踏の中に消えていった。
「まったく、あんなののに基礎から教えるなんてバカみたいなこと出来る訳ないじゃない。 立ち合いしたって数秒で終わるようなの相手にするだけ時間の無駄よ」
恐らく、時間がある時なら…。 と自分が言いそうになったのに気が付いたカトレアが先に5人組を突き放したって感じだけど、確かに基礎を教える程自分は凄くないし、かといってカトレアやルイーズさんは基礎を地道にと言うより身体に覚え込ませろって感じだもんな…。
その結果、自分は毎日ボコボコにされてるんだけど。
まあ実際、カトレアやルイーズさんにボコボコにされて心を折られるよりは、あの5人組が腐らずギルドで行われている戦闘講習をしっかり受けた方が良いだろうし、地道に実力をつけてくれればいいんだけど…。
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