第49話街への帰還

呆然としているルイーズさんを拠点としている家に連れて行き、夕食を食べながらカトレアの事、自分が転生者であることを説明する。


Bランク冒険者だからなのか性格的な物なのか、ルイーズさんは疑問があれば都度質問をし驚きつつも理解をした。

う~ん、理解したというより無理やり納得した?


「まあカトレアが私よりも強いって事は何となく分かっていたけどまさか483歳だったとはな…。 それもノーライフキングだった時の魔石が体内にあるからノーライフキング化も出来るなんてな…。 あの時の身の毛もよだつ瘴気を振り撒けたのもうなずけるな」

「あれね、カツヒコが完全に殺されそうだったから一瞬でもレイムダリーアの気を反らしたかったのよ」


「おいおい、気を反らすってカツヒコまで瘴気にあてられて身が竦んだらどうするつもりだったんだよ」

「その時はその時ね…、まあカツヒコは私の瘴気を何度も浴びて慣れてるから大丈夫と思ったのよ」


こともなげにそんな事を言うカトレアに呆れた様のルイーズさんがお前も苦労してるんだなって目で自分を見ている。

いや、毎日瘴気を浴びせられたりして無いですよ!

墳墓のダンジョンの100階層の足を踏み入れた時と、剣や魔法の修行の際に、どんな状況でも戦えるようにって瘴気を浴びせられただけですからね…。


それにしてもルイーズさんがカトレアの事を知っても騒ぎ出さなくて良かった。

普通に人間だけど魔石が体内にあってノーライフキング化できるなんて知れ渡ったら最悪国を挙げて討伐するとか騒ぎ出しそうだし。


カトレアと自分の事を話し、ルイーズさんが驚きはしていたものの受け入れてくれた事で一応は丸く収まった。


「それはそうとカツヒコ、アイテムBOXにバトルアックス入れてなかった?」

「あるよ! え~っと、確か…、怨呪のバトルアックスと星断のバトルアックス」


「そう、ルイーズはどれが欲しい?」

「えっ? なんだよ突然…」


「そうね、今後パティーを組む組まないは別として私の事を知りそれを受け入れた、言うなればこの世界で私の信頼できる人って事よ。 そんな人が造りは良いけど鉄にミスリルを混ぜただけのバトルアックスを使っていて万が一があったら嫌でしょ。 だからよ…」


カトレアがなんか初恋の人の誕生日に初めてプレゼントをあげるかのような表情をしている。

そんなカトレアの顔をニヤニヤしながら見ていたら思いっきり瘴気を浴びせられた…。

いや瘴気って身体に悪いからね!

慣れだって言うけど普通の人が初めてカトレアの瘴気浴びたら動けなくなるからね!


「それでどっちがいい?」

「どっちがいいって…、 カツヒコの物じゃないのか?」


「カツヒコの物は私の物よ! むしろ私が居た100階層にあった物なんだし、カツヒコは使わないから問題ないわ」


そう言ってアイテムBOXから出した2本のバトルアックスを並べルイーズさんにどちらがいい? と聞いている。

いや、星断のバトルアックス一択でしょ!!!

怨呪のバトルアックスは死者の怨念が籠ってて持つ者の精気を吸い取る上、怨念が使用者に流れ込んで心を蝕むって鑑定結果があるし!!!


心の中でそんなツッコミを入れているがルイーズさんは本気でどちらにしようか迷ってる!!!


「あのルイーズさん、一応説明すると、怨呪のバトルアックスは死者の怨念が籠ってて持つ者の精気を吸い取る上、怨念が使用者に流れ込んで精神を蝕む代物で、星断のバトルアックスは魔力を流し込むことで強度や切れ味、そしてバトルアックス自体の損傷も自己修復するうえ、魔力の刃を飛ばせる代物ですからね! 迷う事は無いと思いますよ!」

「そうか、だが怨呪のバトルアックスも使いこなせれば相当な代物だろ? そう考えるとな…」


いや、迷う? どんだけギャンブラーなの?

使いこなせなければ精気を吸い取られ精神を蝕まれるんですよ!!!

カトレアは本人が決める事だからと言わんばかりに無言を貫いてるし!


「じゃあ、星断のバトルアックスを貰うよ、本当は怨呪のバトルアックスに興味があったんだけど今の私じゃ使いこなせなさそうだしな」


そう言って星断のバトルアックスを手に取り家を出て外で素振りをしている。

ルイーズさんが使ってたバトルアックス同様に2メートル近くある代物ということもあり傍から見ても特に使いづらそうには見えない。

いやむしろ魔力を流し込んで振るとなんか刃の部分がキラキラして綺麗だ…。


ルイーズさんは新しいバトルアックスで素振りを終えると嬉々とした表情をしながら布でバトルアックスを磨いている。

う~ん、普通女の子って宝石とかアクセサリー貰って喜ぶって思ってたけどバトルアックスを貰って喜ぶって女子としてどうなんだろう…。


バトルアックスを嬉しそうに磨く姿を眺めていると、こちらの視線に気づいてルイーズさんがどうした?という表情をしている。

「いや、なんかルイーズさんすごく嬉しそうだなって…」

「ああ、人から物を貰うってそうそうないからな、それも友のような人からだとなおさらだ、それとカツヒコ、いつまでも私をさん付けで呼ぶな、ルイーズでいいぞ、同じ仲間なんだ、さん付けだと他人行儀みたいだしな」


「わかりました、善処します…」

「なんだ善処って…、まあ無理はしなくていいけどな」


そんなたわいもない会話をしつつ明日に備え交代で見張りをしながら休息を取る。


翌日、空が白みだした頃には朝食を摂り、依頼達成の報告をしにキャールの街への道を進む。

途中立ち寄り泊まった開拓村では魔獣を討伐した事を伝えると、村人も安心をしたのかお祭りのような騒ぎとなり、反対に冒険者達からは嫉む様な目を向けられた。

多分ルイーズさんは良いとして、自分とカトレアはお供程度に思われていて、あのパーティーで討伐出来たんなら俺達だって討伐出来たんじゃないかと言った感じだと思う。

まあレイムダリーアが200匹近いウェアウルフの群れを率いていたとも、聖獣になったレイムダリーアと遭遇したとかは話してないから行方不明の冒険者がただ弱かっただけと思ってるんだろうな。

まあそんな嫉む様な視線もルイーズさんが睨みつけると目を背けるぐらいだから実力もそんなに無いんだろうな…。


壊滅した開拓村を出発をして3日後、キャールの街に戻り、ギルドに依頼達成の報告に行く。

ルイーズさんが受付の人に事情を説明すると解体場に案内されてアイテムBOXからウェアウルフの死骸とレイムダリーアを出す。


野次馬はウェアウルフの数に驚きの声を上げていたが、レイムダリーアの死骸を出すと見た事も無い魔獣とその大きさも相まってウェアウルフの時よりも盛大な驚きの声が上がる。

ギルド職員もレイムダリーアを初めて見るのか、ギルドの幹部を慌てて呼びに行きギルド内がちょっとした騒ぎになった。

レイムダリーアに関しては、幹部の人も初めて見るようで買取金額の算定が出来ないとの事で氷魔法で氷漬けにし王都のギルドに運びそこで査定をして買取という事になった。

ウェアウルフ1匹につき銀貨5枚、187匹で金貨93枚と銀貨5枚で93500レン、それに加え依頼達成の報奨金として金貨100枚で合わせて193500レンになった。

キャールの街でも金貨1枚あれば普通に1月は生活出来る世界だから金貨193枚となると相当贅沢に遊んでも早々無くならない程の大金だ。

報酬を受け取りギルドに併設されたカウンターで山分けをしていると、先程解体場で野次馬していた人達が羨ましそうな目でこちらを見ている。


「じゃあ約束通り3等分って事で金貨193枚と銀貨5枚を3等分すると…え~っと…」

「自分とカトレアの取り分は二人で金貨120枚で残りの金貨73枚と銀貨5枚はルイーズさんの取り分でいいですよ」


「それじゃカトレアとカツヒコが損をするだろ!」

「いや、一応墳墓のダンジョンで得た財宝を売ったお金もありますし、この後査定を終わらせたレイムダリーアの買取金も貰いますし」


「いや、レイムダリーアはカツヒコが一人で倒したんだからカツヒコの物だ、私が貰う権利は無い、それに今回は私一人だったら確実に死んでいたようなもんだ、それなのに私が多く貰うのは…」

「カツヒコがいいって言ってるんだからいいのよ、実際お金は結構持ってるしね」

カトレアがそう言うとルイーズさんは申し訳なさそうな顔をしつつも自分の取り分を袋に収める。


「それで次はどんな依頼を受けるの? この3人なら結構楽しく依頼をこなせそうな気がするんだけど」

笑顔でそういうカトレアにルイーズさんも笑顔になり次の依頼を探しに掲示板の元へ行ってしまった…。


個人的にはのんびりとした依頼が良いんですが…。

あぁ~、ダメっぽい、こっちまでこの魔物が強そうで倒し甲斐がありそうとか言う声が聞こえて来た。

どうせ腕を磨く為と言って自分に戦わせるんでしょ?


出来れば普通の魔物を討伐する依頼にして欲しいです。

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