第609話 何も見えない衝撃

「あ、ごめえん。あっちはあ、夜ねえ。それじゃあ何も見えないわあ。」

早起が示してくれたも森はどうやらこの謎の施設から発する光で周囲が見えていたようで、その光の照らしていない部分は夜という事なので当然真っ暗。


「ちょっと待ってねえ。今調整してえ、街が近くにあるでしょお?あっちの街って夜でも光ってるからあ、それを探すわねえ。」


どうやら早起はある程度向こうの事情が分かっている様子。


しかしモニターに映る映像はずっと暗いまま。


「あれえ?やっぱり最初に感じたんだけどお、ちょっと変ねえ。単にい、夜ってだけじゃないわねえ。街の光がねえ、一切見えないのよお?」

一体どういう調べ方してるんだろう。

そう思ったので聞いてみる事に。

「ねえ、あっちではどうやって調べてるの?それとこの映像はこの装置と繋がっている所の今の映像なの?」


「えっとお、あんたなら【かめら】って言ったらわかるのかしらあ?それをねえ、今小高い山ほどの高さにあげちゃってるんだけどお、本当ならねえ、少し離れた場所に大抵小さいながらも町があるはずなんだけどねえ、何にも光が見えないのよねえ。どうするう?明るくなるまで待ってから見ようか?お風呂もあるしい。」


早起の行っている事が半分ほどしか理解できないのと、光が見えないって言うのが何を意味するのか分からなかったので、いったん止めてもらいます。

「このままでは僕が理解できないから、明るくなるまで待とうか。」

「わかったわあ。じゃあお風呂にしましょうかあ?ここの使ってみるう?それともお、あんたの領地?あっちに移動して入る?」

・・・・どうしろと?

「オイヴィどうする?」

「この施設を理解するうえで此処で寝泊まりしてみるのもいいかもしれぬが、どうする?順平殿と同郷の妻を呼んだ方がいいのではないか?」

「うーん、それなんだけどねえ、最悪な事態を考えるとあっちに戻ったとして、既に人がいないとか暮らせなくなっているとか、最悪戦争で核使われて日本中放射能まみれとかありえるからさあ、そんな最悪な事態が発生してしまっていた場合、それを妻達に教えるのもどうかと思うんだよね。妻は皆僕との間に子供を授かって、内心どう思っているかは実際分からない部分もあるけれど、無理に日本に戻ろうと思っていないと思うんだ。戻ろうと画策した様子もないし、そう言った事を口にしてもいないし。だけどこれが向こうと繋がっているとしたら、急に戻りたくなるかもしれない。その時もし向こうに戻れない、戻れても放射能で汚染されてもはや知り合いが誰も生きていない、なんて最悪な事態になっていたらそれはそれでショックじゃないかなあと思うんだ。特に両親が健在だった妻達には親しい身内が死んじゃって、それを看取る事ができなかった・・・・まあ考えすぎだね。」


オイヴィは暫く考えている様子。

「すまないが核やら放射能が理解できないが、順平殿は向こうが既に滅んでいる、そう思っているのだな?」

「早起の様子も変だったし、その可能性もある。」

「・・・・だが何があるかわからぬが、隠し事は良くない。順平殿の考えもわかるが、友郁殿や泉殿は順平殿が思っているような弱い精神の持ち主ではないと思うが。」

「いや、彼女らが弱いとはこれっぽっちも思っていないさ。むしろ他の誰よりもたくましい。というより一番精神的に弱いのは、僕さ。」

「そうであるのであれば、なおさら連れてきたほうがいい。」

どうやら僕は相当精神的に不安定になっていたみたいで、気が付けばオイヴィの手をずっと握っていた。

そしてそっとオイヴィは抱きしめてくれる。


「何も心配する事はない。」

気が付けばオイヴィの心地よい体温に張りつめていた気が緩んだのか、いつの間にか僕は泣いていました。


「うわあ、焼けちゃうわねえ。じゃああっちに繋がるゲートだっけ?あれ出してよ。呼んできてあげるわよお。」


オイヴィが収納かばんからゲートを出して早起に渡しています。


「これをお、床に置くのねえ。で・・・・これねえ。ふーん、簡単で分かりやすいわねえ。」

僕が止める間もなく早起はあっという間にゲートを起動、消えてしまいました。

・・・・ユハニはきちんと対応してくれるのだろうか?

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