勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず！

第432話 獣人の現状

「ではまず1週間時間を頂ければ、ある程度調査いたします。」

　秘書さんの提案を採用し、獣人には1週間後にまた来てもらう事にしました。

「え？ちょっと、なんで？」

　考える時間を与えず、帰ってもらいました。

　ふう、何とかごまかせた【ごまかせてませんよ！】・・・・訳なかったです。

　そして秘書さんが怖い顔をしてこちらを睨んでいます。

「どうするのですか！いくらここが常山領とはいえ、獣人に対してあの振る舞い！彼女達の頭に少しでも邪な考えがあれば、先程どうされてしまったのかを他の獣人に語り、今後あらゆる意味で利用されますよ！」

　あらゆる意味って何でしょうか？

「・・・・その、気を付けます。」

「幸い彼女達の頭の方は・・・・・ゲフンゲフン、そのような邪な考えを持っていない素晴らしい人格者とお見受けしましたから問題ないでしょうが、今後気を付けて下さいね！」

「・・・・はい。」

　今言い直したよね？

　まあ僕が全面的に悪いので追及はしない方がいいですが、獣人ってそうなの？

　そして先程の3人ですが

　・・・・

　・・・

　・・

　・

「姫！気を確かに！」

「そうです！事故ですあれは！」

　必死に姫と呼ばれる女性に語り掛ける2人の獣人。

「彼は何者なのでしょう？この私が後れを取るとは。遅れどころか全てを取られてしまいました♡」

　それもそのはず。

　彼女達はこの辺りでの活動は今までしていなかったので順平達は知らなかったが、3人は冒険者の中でも一握りしかいないＳ級メンバー。

　しかも3人でのパーティーで常に活動している獣人族きっての猛者なのである。

　そんな彼女達が先程の部屋で油断していたのか？

　いくら料理に目がくらんだとはいえ、人の気配には誰より敏感な3人。

　僅かな風の動き、自身の周囲に漂う臭いの変化、周囲数百メートルにわたる音の変化にも気が付く飛び抜けた身体能力。

　そんな彼女達が順平の接近に全く気が付かず、3人共尻尾と耳を許してしまうという大失態。

　本当は3人共最初に順平が尻尾云々の事はきちんと記憶にある。

　あるが無かった事にしようと思った訳だが、今思うと何故そんな考えになったのか。

「あれは本当に人族なのですか？」

「目の前で喋っている時はごく普通の人族に感じたぞ？」

「だがあの時3人とも触れられていても気が付かないとは考えにくい。未だ強いとは感じられないのが最も恐ろしい所だ。」

　単に順平は獣人の尻尾と耳を触りたかっただけなのだが、そんな事を3人は全く知らない。

　そして順平の行動に対する目的がわかっていない3人にとって、順平の行動は謎すぎてどう判断していいかわからない。

　それに動きがどう見ても素人のそれなのである。

「いったい何を相手にしてしまったのだろうな。」

「聞けばあの魔王を撃退した実力の持ち主とか。」

「しかしそんな風には感じられなかった。」

「ああ。だがそれこそがあの人族が真に恐ろしいという事なのだろう。」

　もし今の会話を順平が聞いていれば、勘違いって時にここまでの認識がずれてしまうものなんだなあと思っただろう。