第376話 グビッシュ王国・家臣の悩み
グビッシュ王国は、5年前の勇者召喚で王族の9割以上を失い、国王以下次期国王までも失うという、前代未聞の事態に陥ってしまった。
それに輪をかけての痛手は、召喚に携わった魔術師の全員が命を落とすという、これまた想定外の事態に陥りこの5年相当苦労していたのだ。
そしてまだ若い新国王アルノルト陛下の事だ。
なるべくして国王になったわけではないアルノルト。
本来国王になるはずのないアルノルトだが、生き残った王族の男子の中で彼が一番年上であり、なおかつ国王陛下の実の息子。しかも正室の。
なので本人の意思とは関係なく、アルノルトは無理やり国王にさせられたのだ。
そうはいってっも彼には彼なりに王族としての責任、立場というものを分かっていたので、何とか国王としてグビッシュ王国を盛り上げようと努力をしてきた。
しかし何事にも向き不向きがあり、得手不得手がある。
そしてアルノルトは国王という重責は不向きであり不得手であった。
臣下はそんなアルノルトを盛り立てようとあの手この手を行使するが、どれもアルノルトにとっては悪手であり、追い詰めていった。
「くそ!どいつもこいつも!余をバカにしやがって!そりゃあ余は国王になるべく兄のように帝王学を学ばなかった!姉上であるアーダ姉さまは学んでいたのに余は何故学ばなかったのか!と言われるが仕方ないだろう!18になれば余も学ぶ機会があったやも知れぬが、兄上がいたので学ぶ必要がなかったのだ!」
「まあアルノルトさまったらお可哀そうに。」
今アルノルトは第一夫人である自身の妻に愚痴っている。
そして内心では可哀そうにってお前も王族なんだからなんで学ばなかったんだ!と内心怒り心頭だが、流石に妻にはそういう事は言わないだけの分別はある。
アルノルトの第一夫人は勇者召喚で生き残った従妹のうちの一人。幼い頃より親しかった彼女とは、元々婚約中であり、この騒動の後荒れるアルノルトを宥められるのは彼女だけだ!と臣下はこの王族の女性が成人すると同時に結婚をさせた。
アルノルトの心の平穏の一端は彼女にあるのだが、国王は妻が一人ではいけないという事で、現在アルノルトは20人もの妻を抱えているのである。
そして今順平にこの事を愚痴り始める。
「なぜ20人も妻を娶らねばならなかったか、わかるか!?」
そう言われ順平は困惑する。
「ええ?アルノルトの父上は30人の妻がいたと聞いているけれど、これも国王の責務じゃないの?」
「何を言ってるんだ!こんなに短期間で20人もおかしいだろう!これも全てあんたのせいだよ!」
え?何で僕のせい?そう思うのだけど、
「じゃあ何で父上は30人もの妻を娶ったか知ってる?」
「さっきも言ったけど、責務じゃ?」
「全然違う!国に仕える臣下の為に決まってるじゃないか!」
何でそうなるの?
「わかってないようだから、アーダ姉さまも教えてるはずだけど!国王が複数の女性を妻に向かえないと、臣下は複数の女性を妻に迎える事ができないからじゃないか!国王以上の人数の妻を臣下が迎える訳にはいかないからだ!」
何だか昔アーダがそんな事を言っていた気がするけれど、あれ?別の誰かだった?忘れたけれど。だからって僕に当たってもねえ?
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