第364話 小さな町の領主

奥の部屋へ通され、暫く待っていると、周りが凄く騒がしくなっている事に気が付きます。

何かあった?もしかして転移者の誰かが粗相をした?粗相というか問題を?


この僕の疑問は、半分当たっていたわけですが・・・・何故なら、確かにこの騒動の原因は転移者の一人が引き起こしたものだったからです。


そして誰が?


それは・・・・僕です、ごめんなさい。


王都からほど近いこの小さな町。僕は名前すら知りませんが、徒歩で3日ほどでたどり着く、小さな町。

人口1万人に満たないそうです。


そしてその騒動は、僕を見に来た、たまたまギルド周辺にいた人々が、僕を一目見ようと集まっている、と。

うわ、しまった!わざわざ僕とわからないようにしていたのですが、カードを見せたのがまずかったのでしょうか。


姿は偽れても、カードを偽るわけにはいきません。


「公爵様、残念ですがその姿でやってきた意味が既に為さなくなってしまってますね。」

そういう同行者。


「まあ、他の転移者に知られたくないから姿を偽っただけだし。」

等と言ってみますが、ここに押し込まれた転移者って、九分九厘僕のせいだからね。まあ本当は違うけど、あちらさんはそう思ってないだろうし。

そんな事を思っていると、僕らが待っている部屋に、数人が押しかけてきます。

同行者が警戒していますが、何の事はない、ここの中心者がやってきた様子。


「常山公爵様とは知らなかったとはいえ、このようにお待たせしてしまい、申し訳ございません!」


最初の受付の人もやってきて、一緒に頭を下げています。

「あ、気にしてないですし、何の連絡もせず突然押し掛けたこちらにも非があるので、どうか頭をお上げ下さい。」


あまり人に頭を下げられる事に僕は慣れていないので、正直戸惑ってしまいます。

家臣になった人はまあ仕方ないとは思っていますが、見ず知らずの人にこのように接してもらってしまうのは、いまだ違和感が。


「そ、そう言っていただけると!あ、そうです、ただいま領主様がこちらに向かっております故、もう暫くお待ち下さいませ!」


え?ここの領主が来るの?なんだか慌てさせてしまっているようだけど、いいのかな?


「ここの領主様は子爵ですので、お気になさらず。」

「え?子爵?立派な貴族じゃない!この領地ではトップでしょ?良いの?そんな慌てさせたら今後どう思われるか、ここの民に後々言われない?」

僕は同行者と会話していますが、

「あちらはおそらく公爵を待たすとは何事かと思っているでしょうね?後に、子爵如きが公爵を待たせてしまうとか、いったいここの領主は何様なのだ、と。」


はあ・・・・貴族というのもなかなか面倒ですね。

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