第317話 魔王の真の恐ろしさ

魔王は順平に対し、何重もの呪いをかけていた。

一つはそもそもも呪いと気が付かないよう、先に如何にも呪いとわかるような状況にしておき、こっそり対象の欲求が増大するような呪いを展開していくのである。


だが順平も男。まずこのせいで順平は、ハーレムが嫌いなはずなのに、複数の女性と関係を持つ事に対しての考え方に変化が起こる。

元々付き合っていた彼女がいなかった事もあり、きれいな女性、かわいい顔をした女性等々、ちょっといいなと思った女性にはやはり目が行ってしまう。


そして才村友郁や森江泉のように会社で顔を合わせていたような美人には少なからず思いを寄せてしまう・・・・


そんな秘めた願望までも増大させ、気が付けばその気持ちが手の付けられないところまで増大してしまう。


なまじ魔王と対峙した時、呪いに対処できる人物が傍にいなかった事が呪いの深みにはまる事になってしまい、気が付けば複数の女性に何の躊躇もなく手を出してしまっていた。


これで一体魔王に何の得があるのか疑問だが、何か狙いがあるのだろう。


そして、気が付かないうちに別の呪いを発動、しかも時差。

今回の呪いは精神攻撃。


いい感じに本来の順平の気持ちとかけ離れたハーレムを作らせ、この呪いを少しずつ弱める。

すると今度はなぜこんな事に・・・・と後悔の念が少なからず起こってしまう。


そうした心の隙に付け込んでの精神攻撃。


だが・・・・元神聖騎士であるオイヴィが近くに居た事により、ギリギリのところで最悪の事態を回避。



「まあ現状はこのようなところだな。しかし、よくぞあの場にオイヴィ嬢が居合わせてくれたものだ、感謝するぞ。」


今この場は妻たちの集まりに、オイヴィ嬢と一部の秘書が混ざった状態での緊急会議。そしてアーダが現状を語る。

無論順平は寝たきりで参加していない。


「こんな事でいいのだろうか?」

自身は求婚されたと思ってしまい、求婚を受け入れるつもりだったので、その対象の順平の妻達が目の前に10人以上そろい踏みなのだ。緊張するなというほうが無理というもの。


「まあその、私たちも複雑ですがオイヴィさんがいなければ、気が付かないまま魔王の攻撃に順平さんが・・・・そう思うと感謝こそすれ、その・・・・」

いまだ困惑を隠せず、事態をうまく受け入れられていない才村もまた混乱している。

何せどう見てもオイヴィ嬢は、順平に好意を寄せているのが明らかなのだ。

知らぬとはいえ、これがオイヴィ嬢の国であれば順平はオイヴィ嬢に求婚をし、オイヴィ嬢はそれを受け入れたという、知らなかったとはいえ、女性に対しこのような振る舞いをしてしまったのだ。


「はあ、才村さんもう今更ですよ?あれから何度も話し合ったじゃないですか?オイヴィさん、心配いりませんよ?私達順平さんの妻は、全員、今は子育てでザーラさんはいませんが、事前に確認してますからね。オイヴィさんが今でも順平さんと結ばれたいと思うのでしたら、順平さんの妻として我々は好意的に受け入れるつもりです。で、実の所どうなのですか?」


オイヴィはまさか自分が受け入れられるとは思っていなかったので、驚いている。

「よ・・・・よいのか?確かに常山公爵殿を・・・・す・・・・好きになった。妻になれるものなら・・・・なりたい。」


「オイヴィさん、心配いらないさ。16人が17人になったところで今更。しかも剣技において我々は皆素人でな。レベルが高いので今はオイヴィさんより我々は強いが、同等の強さになればオイヴィさんのほうが強いだろう、違うか?」


「それではオイヴィさんわかりませんよ、古手さん。あ、私は矢坂橋です。もう覚えてもらえましたか?で、順平さんには今後、しっかりとした剣技を持った人に、傍に居てほしかったのですわ。そう、オイヴィさんのような職業として剣を習ったような方がですよお?」


「その・・・・色々な意味でありがとう。その任、生涯をかけて全うしてみせる!」


順平の知らぬ間に、また妻が増えたのだった。

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