第306話 男性不信
座ったはいいけど、どうしよう。綺麗な顔や整った顔はアーダをはじめ、侍女さんを毎日見ているし、友郁や泉みたいな日本人的な美女も毎日のように見てるからその、今更新たな美女を前にしてもどうって事はないはずなんだけど、なんだか彼女を見ると緊張してしまいます。
彼女の眼を見ると、こちらを真っすぐ見つめているので余計かもしれないけど、まるで吸い込まれそうなその瞳。全てを見られているようなそんな感じ。
これは困った、大いに困りました。
だけど僕はこれでも領主・・・・のはず。
まだ領主らしい事をしてない気がするし、肝心な時に寝たきりで、この領地の発展にも殆ど関わってないと言う、まあ
なんちゃって領主の僕に、この女性の射貫くような目に耐えるだけの精神力があるのでしょうか?否、無いですねきっと。
「ええと、改めまして常山順平です。知ってるか知らないかわかりませんが、魔王と退けた功績でこの領地を賜りました。そして王家の女性を妻に迎え、身分も公爵に。分不相応なのですが、まあ一応そんなわけなんです。」
自分で何言ってるのかわからないけれど、何言ったのかな?駄目ですね舞い上がってしまい頭が混乱してしまいます。
「私オイヴィ・ラハテラ、元聖騎士だ。ご領主様のうわさを聞き、どのような人物か見極めようとここに参った次第。」
ええ?僕見極められている?それにどんなうわさを聞いたのかもわからないし。
「あ・・・・その、ごめんなさいこんなので。がっかりしたでしょ?たぶんオイヴィさんの期待とかけ離れてるでしょう?」
すると何を思ったのかオイヴィさんは突然立ち上がり、
「何をがっかりするというのです?貴方は立派な方だ。勇者召喚に巻き込まれたと聞いた。しかし腐らずあの魔王を見事退けたというではないか。それの何処をどうすればがっかりなのだ?」
・・・・何かこう、きっと盛られた話ですよそれって。
実際僕の力はただのスキルのごり押しだし、スキルがなければ魔王に一撃すら与えられなかっただろうし。
「まあ、それは後でいいでしょう。オイヴィさんは、僕に会いに来たのですか?」
「いや、会うのは想定外だ。本来は魔王を退けた人物を調べるだけのつもりだったのだ。だから困惑している。」
「困るよね、いきなり見ず知らずの僕みたいなのが領主ですとか名乗ってそれに会ってしまうんだから。」
「あ、いや困っているのは別の理由だ。私はこう見えて男性が嫌いなのだ。ここ数年まともに会話もしていない。まして触れさせるなど、言語道断。」
・・・・あ!僕手を繋いじゃったよ。しまった!
「あ!ごめんなさい!そうとは知らず、2度も手を握ってしまいましたね。しかもオイヴィさんは僕が領主と気が付いていたから、拒否できないですし。」
「いや、それはいい。信じられぬのは、我がこのように殿方に手を取られるのを許してしまった事なのだ。1度ならず2度までも。何故あの時あっさり握らせてしまったのか、未だに混乱している。本来そんな隙を与えぬのだが・・・・いや、好きとかではないな。我は貴殿の事を認めているのか?」
ええと、どうしたら?なんか途中から独り言みたいになっているようですし。
そしてこの後、ちょっとしたハプニングが発生します。
オイヴィさんが何か感じたのかわからないけれど、
「何故だ・・・・どうしたら・・・・」
何かそう呟きつつ、テーブルに手をバン!と両手で体重をかけるように手をついたのだけど、信じられない事にテーブルがその衝撃で倒れたんです。
「きゃっ!」
僕の方に頭から突っ込んでくる格好になってしまったので、思わず受け止めます。そのままオイヴィさんは僕の腕の中に納まって、こう抱きしめる形になってしまいました。
え?なんでテーブルが壊れるの?
オイヴィさんはそんなに力を込めた感じには見えなかったのだけど。
「あ・・・・うわ・・・・男の人に抱かれた・・・・」
うん、確かに抱きかかえてるけど、嬉しいけれど!これはその不可抗力と言うやつで!
しかも何このいい香り?
何でいい女ってのは匂いもいい香りなの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます