参加者たちが突如巻き込まれて混乱の最中殺し合うことで強制されるデスゲーム。しかし本作の場合は少し事情が違う。
ある日、拉致されて強制的にデスゲームに参加させられた奈良原新汰。デスゲームものの定番の導入だ。しかし、彼はこのゲームに見覚えがあった。それどころかこれは以前彼がゲーム会社で働いていた頃に騙されて作っていたゲームだったのだ。
作ったということは当然ゲームの弱点も知っているわけで、攻略法を持っている主人公が、様々な手段を使って全員生還を目指すという本作品。一つ間違えれば死ぬという状況なのだが、緊張感を全く持たない新汰が平然と行動するのが楽しく、またコミュ障なこともあって周りを説得しては変にこじれてしまうのも楽しい。
また本作のデスゲームものに農業スローライフ要素を組み込んでいるのが面白い。新汰がデスゲームから生還すると、ゲーム内で出会った人たちが新汰の下を訪れ、彼の農場を手伝うようになる。それからしばらくすると新汰はまた新たなデスゲームに巻き込まれ、そこで参加者とまた仲良くなり……というデスゲームと農業の奇妙なサイクルが生まれているのが本作独自の魅力になっている。
(「頑張る経営者!」4選/文=柿崎 憲)