最強
「私の最強!」
黒髪黒目のイケメン剣士、その右手に握られている金色のオーラを纏っている黒剣は全てを破壊できるだろうと思わせる存在感を放っている。
アクアはまだ動いていない状態の剣の勇者を消す為に剣をユウ・オキタに向ける。
『水魔法四式』
アクアは走りながら呪文の詠唱に入る。
水属性超級魔法。
人を飲み込む程の水の玉がアクアの左横に現れる。
『ウォータートルネード』
左手を前に出すと地面を抉りながら回転する水の渦がユウ・オキタに向かって放たれる。
静止していた黒剣がブレる。
ユウ・オキタの直前に迫った超級魔法は金の煌めきを残して消える。
『これで終わりか?』
剣の勇者はアクアに向かって挑発的な笑みを見せる。
(や~め~て~!)
クレスは一人恥ずかしさに悶える。
アクアは練習中の神級魔法を詠唱する。
『水魔法五式』
これが今のアクアの最大。
アクアの周りに五本の水の柱が現れる。
『ウォータードラゴン』
水の柱が全て集まっていきバトルフィールドを覆いつく程の竜が姿を現す。
「おっきいな~」
リリアは上空にいる竜を楽しげに見つめている。
アクアは膝をつき、オーラルを維持する程の魔力もなくなっている。
魔力が無くなれば弱体化の魔法の影響も合わさりアクアはもう動けない。
ユウ・オキタが黒剣を上空に向けて横に振るう。
金色のオーラが黒剣の後を追うように残像を残し、金色のオーラが黒剣に追い付いた瞬間に。
『グワァァガアァァアアア!』
竜の首が切れると魔力の粒子になり消えていく。
ホーリートレースで出した剣の勇者の力は一割、魔法だから弱体化の魔法も効かない。
だが本気を出したリリアでも自分が出したホーリートレースには勝てない。
剣の勇者が瞬時にその場から消えると何時の間にかアクアの目の前に移動している。
剣の勇者が膝をついて、動けないアクアの首筋に黒剣を置く。
「参りました」
アクアが降参を宣言すると剣の勇者は役目は終わったとばかりに光に包まれて消滅する。
誰もが息を飲む会場で剣の勇者なクレスは頭を抱えていた。
(お兄ちゃん褒めてくれるかな~)
「勝者~! リリア~フィ~ルド~!」
「お兄ちゃん!」
「リリア~よくやったな!」
観客席に帰ってきたリリアの頭を撫でながら存分に褒める。
「でもホーリートレースはやらなくてもよかったんじゃないか?」
「アクア君が真剣だったから私の最強の魔法で戦ったの! お兄ちゃんが『真剣な相手を笑わずに自分も真剣に向かい合いなさい』って言ってたもん!」
「うんだがな、あの魔法は最強じゃないじゃん! 俺が神級魔法なのにお遊びみたいな魔法だよって教えたじゃん」
そうリリアに教えた魔法の中で最弱に位置するんじゃないだろうか。
ホーリートレースは神級魔法で魔力消費が大きいのに本人を知れば知るほど強くはなるが本人の一割しか力が出ないというお遊びの魔法だ。
「あれが私の最強だもん。お兄ちゃんに教えて貰った時から私の最強! だってお兄ちゃんが私を守ってくれる魔法だもん」
うっ! 可愛い! まぁいいか。
「リリアは頑張ったからな。次は俺の番だ! 頑張ってくるよ」
「お兄ちゃん! 頑張ってね、精一杯応援するからね!」
妹様に応援されて負けるなんて俺じゃないよな!
呪い? なにそれ? 関係ないね!
俺はリリアと別れ今バトルフィールドにいる。
普通の生徒は最初に入っていてリリアみたいな注目度の高い選手は最後に実況と共に入場だ。
「さぁ、いよいよサドンデスのラストバトル! それを締めくくるのはこの人だ~! ミリアード王国の姫! ミミリア・リル・ミリアード~~!」
実況の声と共にミミリアが姿を現す。
待て、なんて言った? ミリアードだと!
俺は動揺しまくっている。
ミミリアってアリアスの末裔ってやつか!
リリアが模擬戦で戦った相手だが名前は詳細には知らなかった。
『お姉ちゃんと戦ったの~お姉ちゃんはミミリアお姉ちゃんって言うんだよ』
リリアは結構大雑把に喋るからな。
それにしてもアリアスとミミリアって。
に、似てない!
アリアスは金髪に翡翠の瞳、おっとりとして笑顔が眩しい奴だった。
それに対してミミリアは銀髪に翡翠の瞳、気が強そうで凛としている。
共通点は目だけ。
「リリアがあんなに頑張っていたのだ私も全力で行かねばな!」
ミミリアが詠唱を開始する。
『闇魔法五式』
闇属性神級、範囲魔法。
ミミリアの質が高まりバトルフィールドの空中が闇に包まれる。
『ダークインパクト』
空中の闇が中央に集まって行き、圧縮していた闇を解き放つ。
見えないよな? 暗いし。
俺はミミリアが出した闇を模擬剣で斬る。
周りを見れば闇に呑まれて誰も立っていない。
闇が晴れるとバトルフィールドの皆んなは倒れたまま気絶している。
「ほぅ、少しは骨のあるやつがいるな。お前の名前はなんだ?」
「人に名前を聞く時は自分からとか言うだろ? まぁいいか、クレス・フィールドだ」
「私はミミリア・リル・ミリアードだ。お前がリリアの兄か? 油断できんな」
ミミリアの質が高まっていきオーラルを纏うと翡翠の目が紫色に変わる。
「ミミリアに一つ訪ねたいことがあるんだが」
「初対面の相手にいきなりミミリアか、訪ねたい事とはなんだ?」
「ミリアード王国のアリアス姫ってどんな奴と結婚したんだっけ?」
「そんなことも知らないのか? アリアス様は生涯独身を貫かれた人だ。剣の勇者以外夫には認めないとな」
「じゃあミミリアは末裔じゃないのか?」
「私はアリアス様のお兄様からの血筋だ。アリアス様とも血は繋がっている」
兄か、アイツは銀髪で気が強そうで凛としていてイケメンで、あぁ確かに!
アリアスには悪いことしたな、俺みたいに生まれ変わってたりしてな。
「教えてくれてありがとよ」
「そういえば王国の文献にアリアス様は剣の勇者様が元の世界に帰る時に一緒に行ったと記されている物もある」
えっ? あの引っ張られる感触って? いや、まさかな。
「それじゃあ始めようか。リリアからは兄は強いと言われているからな本気で行くから手加減はできんぞ」
「リリアにそこまで言われてるなら証明しないとな!」
俺は普段の一割以下の力から二割に上げる。
呪い? 言ってるだろ? リリアに応援されて負ける訳にはいかないってな!
少し本気を出してやるよ。
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